欧州

2023.12.18 11:30

橋頭堡攻撃のロシア空挺師団「桁外れの大損害」 ウクライナは反攻の芽残す

遠藤宗生
数で著しく劣り、地上と空から容赦のない砲撃や爆撃にさらされながら、橋頭堡のウクライナ軍部隊がどのように持ちこたえてきたのかは、もはや謎ではない。海兵の渡河に先立って、ウクライナ軍の砲兵とドローン操縦士はドニプロ川左岸のロシア側の電波妨害(ジャミング)装置を破壊し、電子戦の専門兵はウクライナ側の電波妨害装置を設置したのだ。

その結果、クリンキ上空ではロシア側のドローンは飛べなくなり、ウクライナ側のドローンが自由に飛び回れるようになった。ロシア軍の車両や歩兵は姿を見せると数分のうちに空から攻撃を受ける。「クリンキ方面の状況はわれわれ側が悪化の一途をたどっている」とロシア側の観察者は嘆いている

もっとも、ウクライナの海兵たちがクリンキを保持し、第104師団を打ち負かしているからといって、近いうちにヘルソン州南部で突破を成し遂げ、クリミアに向けて進撃しそうにはない。ウクライナ軍は南部での反戦攻勢がピークに達してから数週間後、攻勢のための戦闘力を使い果たし、攻勢から守勢に転じた。

一方、ロシア側は攻勢に出ており、補給線が短い東部では、鉄道で人員や装備を何百kmも移動させなくてはならない南部より成功している。

それでも、ウクライナ側はクリンキを保持することで、ゆくゆくはこの橋頭堡から反攻を開始するという選択肢を確保している。

この選択肢がウクライナ軍参謀本部にとって非常に重要なのは明らかだ。ウクライナ軍指導部は明らかに、保有する最高の電波妨害装置の多くや、爆薬を積んだドローンのかなりの数をクリンキ方面の戦いに投入している。そのために、ロシア軍の猛攻を受けてきたドネツク州アウジーイウカをはじめ、東部戦域の防衛努力を犠牲にしている可能性もある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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