欧州

2023.12.11 11:30

ロシア、今冬もウクライナの送電網攻撃 手段はミサイルからドローンに


サーモバリック弾を搭載したシャヘドは、テロ兵器として都市部の標的により大きな被害を与える可能性がある。確かにロシアは以前、アパートが立ち並ぶ区域をミサイルで攻撃したことがある。だが、冬の作戦の主な標的はエネルギーインフラ、特に変電所や変圧器、配電設備だ。

ウクライナの軍事ニュース専門サイト、ディフェンス・エクスプレスの記事では、新型弾頭がサーモバリック弾であったとの見方を否定。あらかじめ形成されたタングステン片を含む標準的な爆弾で、既存のロシア軍のミサイル弾頭から転用されたものだとしている。こちらの方が、電気設備を損傷させるのにはるかに適しているだろう。

ロシア軍も少数を使用している小型のシャヘド131には以前、はるかに高度な弾頭が搭載されていた。だが生産にかかるコストと複雑さのためか、生産規模を拡大して大量に使用することはなかったようだ。

空の攻防

ウクライナはシャヘドの大半を撃墜したと主張している。例えば今月6日に、飛来したシャヘド48機のうち41機を標的に到達する前に撃墜したという。成功率は85%だ(この数字の信ぴょう性は検証できない)。ロシア軍は目標に到達する割合を増やす方法を模索しているようだ。

最新のシャヘドの一部には、ウクライナの携帯電話通信網に接続するためのウクライナの通信会社キーウスターのSIMカードとモデムが搭載されていることが明らかになった。これはシャヘドの飛行中、操縦士が標的の座標を更新できるようにするためかもしれないが、シャヘドの位置を追跡できるようにするのが主目的である可能性の方が高い。どの機体が標的に到達し、他の機体がどこで撃墜されたのかがわかり、それによりウクライナ軍の防空の分布を把握して次の攻撃時に防空が機能している箇所を回避することができる。

ロシア軍はデコイも飛ばしている。ウクライナ上空で撃墜された粗末な外観の木製のドローンを詳しく調べたところ、長距離飛行が可能で、レーダーに映りやすくするかもしれないレーダー反射板を搭載していることがわかった。画像分析を行うXユーザー「DanielIR」は、デコイのドローンがロシアの首都モスクワのルドネボ工業団地にある、研究組織「センター・フォー・オートノーマス・ロボティック・システムズ」運営のハイテクな施設で生産されたことを突き止めた。これらのドローンは、実際の攻撃から防衛する側の注意をそらすために設計されたデコイであるように思われる。
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翻訳=溝口慈子

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