起業家

2023.12.08

医療の情報格差解消で誰ひとり取り残さない世界へ

(写真左)投資家 河合聡一郎 ReBoost(同右)起業家 山田裕揮 Medii

リウマチ膠原病専門医である山田裕揮は2020年2月、患者数が限られ、医師の知見に偏りが生じている難病診療を支える仕組みづくりとして、Mediiを創業した。同社は、患者の診断や対応に悩むクリニックなどの医師が、専門医に相談できるオンラインマッチングサービス「E-コンサル」を提供。全42専門領域について1000人以上のエキスパート専門医が登録しており、よくある臨床疑問から診断困難例、治療方針、希少疾患に至るまで相談ができる。
 
スタートアップ企業の人事戦略や採用活動を支援しているReBoostの河合聡一郎は、エンジェル投資家としてMediiの創業直後に出資し、支援している。


河合:すごく真摯で誠実な方というのが山田さんの第一印象。丁寧な言葉づかいや相手の目をしっかり見てお話しする姿勢はもちろんですが、ご自身が体感された医療現場の情報格差という課題を、テクノロジーを活用して解消したいという強い意志をもっている。医師というある種の安定した職に就きながらも、スタートアップとして起業するというチャレンジ精神、そして事業の社会的意義にも共感し、お話を伺ってすぐに出資したいと思いました。

山田:身の回りは医療関係者ばかりで、起業すると決めたときは、経営について右も左もわからない状態でしたが、ひとつだけ確信していたのは、人とのご縁がすごく重要になるということ。いいネットワークに入っていけば、事業の成功確率も上がるだろうと思ったんです。それで、あるスタートアップ企業で採用の責任者をしている気の置けない友人に相談したところ、いいご縁になるだろうということで、河合さんを紹介していただいた経緯です。

河合:山田さんは強固なビジョンに加えて、高い熱量で人を巻き込んでいく推進力を兼ね備えている。それから、学習能力が高いですよね。起業家としてあらゆることをやらないといけないなかで、日々起こるいろんな事象に対して、どこに課題があったのかを内省して、答えを探すというプロセスを心底楽しんでいる。経営者としてすごい勢いで成長していると感じます。

山田:創業前から書籍を読みあさるなど、できる限りの情報収集はしていたつもりですが、実際には目を通しただけで、実を伴っていない限りは生かしきれません。失敗を経験しながら都度、自分をアジャストさせています。ビジネスはいろんな考え方、価値観の人たちがいますから難しいし、面白い。特に初期の組織づくりには苦労しましたね。いろんな出会いや別れがありますが、私にとっては、その全員が自分を育ててくれる「先生」であり仲間。河合さんのご支援のおかげで、ようやくある程度のかたちができてきました。

河合:私はヒントを渡しただけ。すごいのは、それを体現している山田さんです。今、Mediiは60人くらいの組織ですが、正社員は10人強で、そのほかは業務委託の方で構成される比較的めずらしい形態ですよね。会社のビジョンやカルチャー、働き方に合わせた人を採用することを徹底している。こうした組織のつくり方を発明されたのも、山田さんの考えがしっかりしているからです。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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