都市総合力3位の東京が、ナイトライフ充実度で30位のワケ

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2023年版「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index, GPCI)」が11月9日、発表された。

森記念財団 都市戦略研究所(所長:竹中平蔵)が2008年より調査・発表しているこのGPCIは、主要48都市を対象に「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通・アクセス」の6分野を70指標で評価。各都市の強み・弱点を明示する貴重なデータを提供している。

都市政策やビジネス戦略等に関する意思決定やアクションにおいて、代表的な都市評価指標の一つとして活用されている。

東京は総合力3位。ナイトライフ充実度は30位という結果に

さて結果は?というと、東京が「総合力」でロンドン、ニューヨークに次ぐ3位に、8年連続で入った。

しかし「文化・交流」分野では5位。さらに内訳を見てみると「ナイトライフの充実度」において、ロンドン1位、ニューヨーク5位に対し、東京は30位と急激に下がる。

NHKによると、GPCI作業委員会の主査を務める明治大学の市川宏雄名誉教授も「海外から人が戻ってくる中、人々が東京の何に魅力を感じるか、早く見極める必要がある。例えばナイトライフは東京の課題だ」と指摘している。

ナイトライフの充実度を高めることが、東京の文化・交流、ひいては総合力を高めるために極めて重要なのだ。

では東京、そして日本の都市のナイトライフに欠けているものは何か──?

ランキングの1位、ロンドンのナイトタイムエコノミー戦略とその推進手法に学んでみたい。

「都市の創造性」は夜に。ロンドンが目指すビジョンとは

ロンドンは国際的な多文化都市であり、様々なバックグラウンドを持つ人々が共存する。

2016年にロンドン市長に就任したサディク・カーンの政策は、この多様性とそこから生まれる都市の創造性こそロンドンの価値だと捉え、多様なライフスタイルを包摂する「24Hour City London」というコンセプトを掲げるとともに、ナイトツァー(夜の市長。他都市ではナイトメイヤーなどと呼ばれる役職)を創設し、エイミー・ラメ氏を任命した。
ロンドン市長サディク・カーン(Photo by Jack Taylor/Getty Images)

ロンドン市長サディク・カーン(Photo by Jack Taylor/Getty Images)

「成功する都市を作るための要素は何でしょうか? もちろん都市には良い住宅、良い仕事、安全な通りや効率的な交通が必要です。しかし、成功する都市と言えるためには創造的である必要があります。創造性は私たちの魂を満たし、心を刺激します。そして創造的な都市は夜に繁栄するのです」

このようなカーン市長のステイトメントから始まる「From Good Night to Great Night: A Vision for London as a 24-Hour City」は、ロンドンがナイトライフのビジョンを掲げた最初の公式文書だ。

ロンドンの夜が持つ経済効果に加え、創造性に富む文化の重要性に言及し、安全と福祉の促進、多様な夜の活動の提供、投資や起業の促進など、「24Hour City」に関する10の基本的な原則や方針を示した。このビジョンは、2017年7月から約半年間かけ、多様な関係者から意見を集めるオープン・プロセスによって策定された。
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文=齋藤貴弘 編集=宇藤智子

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