経済・社会

2023.12.08 13:00

都市総合力3位の東京が、ナイトライフ充実度で30位のワケ

基盤作り、戦略策定まで一気通貫で推進

続いて、ロンドン市は同ビジョンを実現していくために、大きく二つのプロジェクトを実施した。

ひとつは夜間に関する具体的な調査と提案「Think Night: London's Neighborhoods from 6pm to 6am」、そしてもう一つがロンドン市の各区が実践していくための戦略策定のガイドライン「Developing a Night Time Strategy」である。

「Vision」の策定、現状の調査と提言としての「Think Night」、実践していくための戦略である「Strategy」という一気通貫の流れでナイトタイムエコノミーを推進しているのである。

「Think Night」は、シティプロモーション、夜間労働者、ナイトクラブ等の夜間事業者、都市計画、エリアマネジメント、DJ、住民団体、自治体、警察等の代表から構成され発足したナイトタイム委員会が、2017年10月から2019年1月にかけて「夜間(6pmから6am)に都市をどのように利用するか」についての詳細な調査を実施。同調査をもとに以下のような提言を行なった。

1. すべての新政策が夜の文化や経済、幸福度に対してどのような影響を与えるかを評価する「ナイトテスト」の導入

2. ロンドン市内の各区に夜間戦略を行き届かせるための「ナイトタイムガイダンス」の作成

3. 経済効果、夜間交通、ライセンス、安全性に関する「データを集中管理する組織」の発足 

4. 各種施策の進捗を示す「指標」の設定と、年次報告書での公表

5. 商業地域の夜間の魅力度を向上させる​「ナイトタイム・エンタープライズゾーン基金*」の設立
* 利用可能な資金は39万ポンド(約7300万円)で、ロンドン全域に少なくとも3つの新しいナイトタイムエンタープライズゾーンを作る。最初のパイロットプロジェクトはワルサムフォレスト区で実施され、プロモーションキャンペーン等を実施することで夜間の歩行者の流れを22%増加させることに成功した

6. ロンドン全域での「営業時間延長」についての研究

7. 都市全体の夜間の安全性を向上させ、歓迎される場所にするための「パートナーシップ」の支援

8. 安全で活気ある「公共空間活用のためのガイダンス」の開発

9. バス、地下鉄、電車間の夜間料金の一律化・ナイトライダー運賃導入等を検討する「深夜交通ワーキンググループ」の設立

10. 夜間の取組みを周知するための「シティプロモーション組織」の役割拡大
Photo by Prisma by Dukas/Universal Images Group via Getty Images

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そして、2021年3月に公開された「Developing a Night Time Strategy」では、ロンドン市内の各区に対し、夜間経済をどのように促進するかについて、5つのステージから成る戦略的なフレームワークを提供している。

ステージ1:プロジェクト開始(ステークホルダーの整理やチーム化等)
ステージ2:エビデンスベースの構築(各種調査や現状分析等)
ステージ3:ビジョンの策定
ステージ4:ビジョン実現のための戦略とアクションプランの策定
ステージ5:モニタリング、評価、改善

都市デザインと公共空間の計画に特化した専門企業であるPublicaが、グレーター・ロンドン・オーソリティ(ロンドン市長とロンドン議会で構成される地方公共機関)、および夜の市長の委託を受け作成したものだ。
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文=齋藤貴弘 編集=宇藤智子

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