スポーツ

2023.11.27 11:45

アウェイ平壌では「0勝」、好調サッカー日本代表を待ち受ける鬼門

坂元 耕二

中国・北京経由で入国するまでに一苦労しただけではない。日本メディアの取材がペン6人、カメラ4人に限定された試合に関しても、事業報告書にはこう記されている。

「試合では隣の人の声が聞こえないほどの統率された応援とブーイングに圧倒され、選手の当たりも激しく、完全に相手ペースの試合となった。また、慣れない人工芝にも苦戦し、ペースをつかめないまま50分(後半5分)に失点して敗れた」

公式な報告以外にも、チームは平壌滞在中に経験したことのない洗礼を浴びている。

保安を理由に携帯電話の持ち込みは禁止。パソコンも厳しく制限され、インスタントラーメンなども入国時にすべて没収された。万が一のトラブルを防ぐために、チームは日課にしていた散歩だけでなく、政治絡みに関する会話もすべて自粛した。

宿泊先となった外国人観光客専用のホテルには、フロアごとに数人の守衛が鋭い眼光向ける。壁一面が鏡張りの部屋で、24時間体制で監視されるような不気味さに耐えられなかったのかシングルルームがあてがわれながら、2人で寝た選手もいたほどだ。

試合前に心身を消耗させる状況に加えて、17年4月には外務省が北朝鮮全土を対象に「目的の如何を問わず、渡航は自粛してください」と要請した。同省海外安全ホームページには、渡航自粛措置の理由に関して現時点でもこう記されている。

「北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射を繰り返しています。こうした状況も踏まえ、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決のために我が国がとるべき最も有効な手段は何か、という観点から、一連の我が国独自の対北朝鮮措置を実施しています」

以前にも増して政治的な緊張感が高まっているなかで、アジア2次予選で北朝鮮と同じグループになった。直後からファン・サポーターの間でこんな声が上がり始めた。北朝鮮とのアウェイ戦は、チームの安全を守るためにも中立的な第三国で開催すべきだ、と。

「ホーム国」の決定に従うしかないルール


公式戦の第三国開催は、決して珍しいケースではない。例えば21日のシリア-日本も、内戦による政情不安が続くシリア国内での試合開催は難しいと同国サッカー協会が判断した結果、サウジアラビア第2の都市ジッダでの代替開催となっていた。

北朝鮮のホームで行われる予定だった日本との公式戦が、タイの首都バンコクで代替開催された例もある。ジーコ監督に率いられた日本が2-0で勝利し、W杯ドイツ大会出場を決めた05年6月のアジア最終予選だ。
次ページ > ファンもメディアもいない状態では荒れた試合に。

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