スポーツ

2023.08.27

W杯での「クソみたいなプレー」を経て強めた自己暗示力

photo by Gettyimages (Etsuo Hara)

昨年のカタールW杯で脚光を浴びた浅野拓磨の現在地が霞む。次回のW杯へ向けて続投した森保一監督のもと、今年に入って4試合が行われた日本代表戦で、無得点。ほかのアタッカーたちとは対照的だ。所属するドイツ1部ボーフムでも昨シーズンは3ゴールのみ。しかし、浅野から、悲壮感は伝わってこない。W杯で優勝候補ドイツ代表を撃破する歴史的なゴールを決めた28歳のストライカーを支える、究極のポジティブシンキングの源泉を探った。


今年に入って4試合が行われた日本代表戦で、12ものゴールが生まれている。2ゴールをあげた三笘薫をはじめ、久保建英、上田綺世、古橋亨梧、堂安律、伊東純也、前田大然、西村拓真、中村敬斗と招集されたアタッカーたちが華々しくゴールで共演している。

対照的に浅野拓磨だけは3試合、トータルで100分近くもピッチに立ちながら無得点が続いている。代表戦で最後に決めたゴールは昨年11月23日。中東カタールで開催されたW杯における、ドイツ代表とのグループリーグ初戦の後半38分にまでさかのぼる。

味方のロングパスに抜け出し、武器であるスピードを生かしてゴール前へ迫り、角度のない位置から迷わずに右足を一閃。ドイツが誇る世界的な名ゴールキーパー、マヌエル・ノイアーの牙城に風穴を開けた強烈な一撃は、ただのゴールではなかった。

浅野の衝撃的なゴールで日本が逆転した一戦はそのまま終了。W杯で4度の優勝を誇るヨーロッパの強豪国から初勝利を奪い、世界中を驚かせた世紀の大番狂わせの立役者としてスポットライトを浴びた浅野は、試合後の第一声をこう切り出した。

「今日の試合に関してだけは、ヒーローになれたかなと個人的には思っています」

日本中を感動させて約8カ月。浅野は現状をどのように受け止めているのか。

「代表に呼ばれるたびに、いい選手が増えている。選手一人ひとりのレベルが上がってきていると毎回のように感じているし、僕もその流れについていかなきゃいけないと思います。日本代表が強くなるための環境というものは、すごく整ってきているんじゃないか、と。いい意味で日本は変わってきていると思います」

浅野は今年6月のエルサルバドル代表戦で後半途中からの出場に甘んじ、ペルー代表戦にいたってはベンチで待機したまま、チームメイトたちのゴールラッシュを見届けた。
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