2023.11.19 12:00

迫力の次世代GT-Rを「GT-Rと呼ばないで」という理由

坂元 耕二

では、そのシャープでエッジの効いたウエッジ形の外観はどうだろう? 同じジャパンショーでデビューした新型マツダ・アイコニックSPやホンダ・プレリュードのコンセプトが、かわいらしく、すぐにでも生産できそうだったのに対し、この次期GT-Rは、20年前のテスラ・サイバートラックのような出来栄え。つまり、すぐには生産できそうもないということ。

日産はこのプロトタイプ風のデザインを、発売前にエッジを大幅に柔らげる必要があるだろう。僕は、同車はエッジー過ぎてあまり現実的でないと感じたけど、オーストラリアの自動車評論家が「俺はこのクルマは格好良いと思うよ。やはり、GT-RはEVとしてカムバックするだろう。そして、1360psでどのライバルにも負けないはず。それがGT-Rに使命だろう」と言う。



一方、イタリアのベテランの自動車ライターは、「日産は何を考えているのかな? これはまるで漫画の中から生まれたような感じ。1360psもパワフルすぎて、公道では誰も運転できっこないだろう」と辛口。

NISMOと共同開発された次期GT-Rのカーボン・ファイバー製ボディは、戦闘機のような造形で、可能な限り速く走ることだけを目的としている。日産によれば、次期GT-Rには2つの走行モードがあり、レース用の「R」とグランドツーリング用の「GT」があり、最新の車載技術に合わせて、車内の色はモードごとに変化し、計器類も変化する。

1999年発表のGT-R R34と同様、名門グランツーリスモがダッシュボードのグラフィックを共同開発し、期待通り、次期GT-Rがサーキットをフルスピードで疾走する、それなりに印象的なゲーム風のバーチャル映像も作成されている。



室内では、ステアリングホイールの周囲に4つのディスプレイが配置され、タイヤの温度、タイヤの空気圧、ブレーキローターの温度、ドライブトレイン(前後)の配分が表示される。また、ドライバーはコックピット内のスイッチを使って、サスペンションとスタビライザーをリアルタイムで調整することができる。

もうひとつの新技術には、いわゆる "プラズマ・アクチュエーター "がある。これが「空気の剥離を抑えるので、コーナリング時の内輪のリフトを最大限抑え、強力なグリップ力を実現する」と、日産がいう。すでにプラズマ・アクチュエーターの特許を申請している日産は、この装置を将来のモデルに採用する予定らしい。

では、なぜ今、「GT-Rと呼ばないでほしい」GT-Rを発表したのか? それは、日産は90周年を盛大に祝いたかったからのようだ。この1360psの野獣こそが、そのセレブレーションなのだ。同社は、この野獣がGT-Rであることを否定しているが、それは事実である。ある情報筋によると、日産は2028年に次世代全固体電池を市場に投入する予定で、だからこそ、このGT-Rはそれを発表するのに最適なクルマだと思う。それまでは、「GT-Rと呼ばないで」ということだろう。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
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