蘇る「楽観主義」 日本、インド、中国などが秘める悲観論からの突破口

マーク・アンドリーセン(Getty Images)

2023年を覆ったムードは悲観論だ。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は10月中旬に「世界は、ここ数十年で最も危険な時期かもしれない」と警告した。

戦争、インフレ、主要国すべての政治的怒り、停滞する市場、挙げればキリがないが、全世界で憂鬱なニュースが溢れている。こんな中で、楽観主義は子どもの甘えのように感じられる。しかし、ウィンストン・チャーチルは今よりもひどかった時代に「地獄の真っただ中にいるときは、そのまま突き進め」と語った。彼は正しかった。このコラムでは、より良い未来へ続く合理的な楽観主義の道を、目を大きく見開いて進み続けることを訴える。

私が住んでいるシリコンバレーでは、ある有名なベンチャーキャピタリストが腐った考え方への挑戦を決意した。

これには少し背景の説明が必要だ。もし仮に今日の世界的な経済・地政学的情勢が十分悪いものでないとしても、シリコンバレーは独自の地獄を経験している最中だ。2015年から2021年までに資金を調達した膨大な数のハイテクスタートアップが資金不足に陥っている。どんな犠牲を払っても成長するか? その窓は閉じられた。評価額が下がると、資金調達の余裕が狭まる。レイオフは増え続けている。IPO市場はまだ見えておらず、早くても2025年になるだろう。

その上、シリコンバレーは自ら招いた風評被害に苦しんでいる。セラノスのエリザベス・ホームズは現在、服役中だ。11月には、FTXとアラメダ・リサーチのサム・バンクマン=フリードが詐欺と共謀の罪で有罪判決を受け、数十年の懲役刑に直面している。最も有名なVCであるセコイア・キャピタルは、バンクマン=フリードに2億1400万ドル(約323億7000万円)を提供した。31歳の詐欺師(バンクマン=フリード)は、コンピュータゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』をプレイしながら、資金調達のためのプレゼンを行っていた。「この創業者が大好きだ」とセコイアのパートナーがプレゼン中にテキストメッセージを送ったのは、驚くほどの軽率さだった。

楽観主義の話に戻ろう。10月中旬、ウェブブラウザの発明者でありベンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンが、自身の会社のウェブサイトに「テクノ・オプティミスト(テクノ楽観主義者)宣言」という記事を掲載した。その記事は完璧なタイミングで話題となった。今日の悲観主義の濃い霧でほとんど窒息しかけている中、楽観主義は突破口を見つけようとしている。

アンドリーセンの言葉を要約するなら以下のようなものになる。
成長は生命力、拡張、知識の増大、より高い幸福へと導く。すべての良いものは成長の結果生まれる。成長しないことは停滞を意味し、ゼロサム思考、内部抗争、劣化、崩壊、そして最終的には死へとつながる。成長の源泉は、人口増加、天然資源の利用、技術の3つしかない。先進国社会は世界中で人口減少が進んでいる。天然資源の利用には、現実的にも政治的にも厳しい限界がある。なので、唯一の永続的な成長の源泉は技術だけだ。
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翻訳=酒匂寛

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