ヘルスケア

2023.11.02 09:00

女性特有のがん、アジア太平洋地域で急増 深刻な課題に

督 あかり

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現在、世界の乳がん患者の45%と、子宮頸がんによる死亡者の58%がアジアで占められています。

子宮頸がん撲滅の目標を達成するために1ドル投資されるごとに、3ドル以上のリターンが期待できるとされています。

女性特有のがんによる影響を軽減するために、政府が着手できる変革に向けた取り組みは数多くあります。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。


がんに、公平さはありません。医学や科学の著しい進歩にもかかわらず、毎年何百万人もの死者を出しているがん。その罹患率が世界中で急上昇を続ける中、女性への影響はますます深刻化しています。

影響が最も顕著なのは、アジア太平洋地域(APAC)です。現在、世界全体の乳がん患者の45%、そして、子宮頸がんによる死亡者の58%がアジアで占められており、世界の他の地域に比べ、今後も急速な増加が見込まれています。アジアで何らかの変化が起きない限り、2020年から2030年の間に、乳がん罹患率は21%、子宮頸がん罹患率は19%増加すると予測されています。

低所得国から高所得国へと一部の国が移行したことなど、この地域の人口動態の変化が、がん患者急増の一因となっていますが、同様に、スティグマ、認識不足、必要な医療サービスへの女性のアクセスが制限されていることもまた理由の一つです。

そして、文化的な期待、根強いジェンダー規範、依然として続くタブーが、女性の健康増進を目指すサービスを優先する政治的な意思決定を妨げてきました。こうした状況はいずれも、アジアの女性たち、その家族、コミュニティにとって不公平なもので、こうあるべきではありません。
 アジア全域で、がんが女性にとって深刻な課題となっています。 Image: APAC Women's Cancer Coalition

アジア全域で、がんが女性にとって深刻な課題となっています。 Image: APAC Women's Cancer Coalition


世界保健機関が掲げる目標

世界保健機関(WHO)は、2020年から2040年までの間に、乳がんの死亡率を年平均2.5%減少させること、そして、2030年までに、子宮頸がんのワクチン接種、検診、治療に関する目標を達成し、次の世紀に子宮頸がんを撲滅することを目指しています。

女性のがんが依然として急増しているAPACで、これらの目標を達成することは容易ではありませんが、アジア太平洋女性がん連合(WCC)は、WHOの目標達成に向けAPAC諸国が取るべき主要な行動を特定する調査報告書の作成をはじめとした取り組みを進めています。

同報告書の著者は、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムからの洞察を明らかにすると共に、政策と計画、予防と検査、診断とリソース能力、治療とアクセス、一般の認識と教育といった、5つの主要な領域における地域および国別の課題や機会を共有しています。

APAC諸国では、臨床ガイドラインの開発、治療範囲の拡大、疾患教育の強化など、特定の分野で進展が見られるものの、女性の生活を向上させるための潜在的な可能性がまだ残されています。6カ国すべてにおいて最も弱い領域は、診断とリソース能力です。

これらの国々は、治療を必要とする患者を特定し、患者へ適切な医療サービスを提供することに課題を抱えています。医療機関のキャパシティの問題から、治療計画が不明瞭で、患者が適切な治療を受けられない状況に陥ることもあります。また、診断を受けた患者は、特に最新の治療にかかる多額の費用にも悩まされることになります。
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文=Ahmed Elhusseiny, Area Head of Asia-Pacific, Roche Pharmaceuticals

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