欧州

2023.10.28 09:30

ロシア、80年前のりゅう弾砲も戦地投入 ただし砲兵部隊「崩壊」は意味せず

遠藤宗生

旧ソ連製のD-1りゅう弾砲(Free Wind 2014 / Shutterstock.com)

10月の第1週に繰り広げられたロシア軍の集中砲撃は、同軍がウクライナ東部アウジーイウカへの攻撃を計画していることを示す、最初の明確な兆候のひとつだった。ロシアが占領しているドネツクの北西に位置するアウジーイウカは、ウクライナ軍が拠点を置いている。

その際の砲撃で、80年前のりゅう弾砲が使われた可能性がある。これは、1年8カ月にわたり続くロシアのウクライナ侵攻で投入されたものの中で、最も古い大砲かもしれない。

22日にソーシャルメディアに投稿された映像には、第132自動車化狙撃旅団で使用されている口径152mmのD-1けん引式りゅう弾砲が、アウジーイウカの北約16kmに位置するホルリウカ近郊とされる場所から砲撃を行っている様子が映っている。

重量4トンのD-1は1943年に生産が始まり、約2800門が1970年代までソ連軍の砲兵部隊に装備されていた。一連のD-1がどこかの倉庫に眠っていたことは明らかだ。大砲をますます必要としているロシアがその一部を引っ張り出してきて、ウクライナの親ロシア派勢力が所属する第132旅団に装備したのだ。

D-1は約40kgの砲弾をせいぜい約13kmしか飛ばせない。この射程は近代的なりゅう弾砲の半分だ。ロシア軍、そしてその同盟組織が、80年前のD-1をわざわざ使う理由は明白だ。ウクライナで戦うロシア軍が失ったりゅう弾砲とロケット発射機は1000門を下らない。そしてウクライナ軍の大砲対策が改善されるにつれ、損失は急速に増えている。

アウジーイウカ周辺のウクライナ軍陣地への最初の砲撃時に第132旅団の砲兵らは射程に収められる範囲にいたが、砲撃に参加したかどうかは定かでない。数週間にわたる作戦の第一段階はこれまでのところ、第2諸兵科連合軍とそのいくつかの構成旅団や連隊にとって悲惨な結果となっている。

それぞれ兵士約2000人を擁するロシア軍の3個旅団が、アウジーイウカに向けて繰り返し攻撃を仕掛けた。その3分の1がウクライナ軍の地雷やドローン、大砲によって失われた。

次ページ > 火力支援がの「崩壊」は意味せず

翻訳=溝口慈子

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事