欧州

2023.10.25

ロシア軍、アウジーイウカ周辺で1個旅団分の兵力失う

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ウクライナ軍が南部と東部で待望の反転攻勢を開始してから4カ月後、ロシア軍は形勢の挽回を図った。

ロシア軍の第2諸兵科連合軍とそこに配属されている親ロシア派地支配地域「ドネツク人民共和国」の部隊は10日、東部ドネツク州ドネツク市の北西に位置するウクライナ軍の要衝アウジーイウカ周辺を攻撃した。1個2000〜3000人規模の旅団少なくとも3個が参加した。

ロシア軍の部隊は、ウクライナ側がアウジーイウカの北と南に周到に設けたキルゾーン(撃破地帯)に直接進入した。以後2週間にわたり、ロシア側は次から次に攻撃を仕掛けた。だがその都度、ロシア軍の縦隊はウクライナ側の地雷やドローン(無人機)、砲撃によってつぶされた。

ロシア軍の損害はこれまでに、装甲車100両以上、戦死・戦傷者計数百人にのぼっている。死傷者は数千人規模に膨らんでいる可能性もある。ロシア軍がある区域で1日に出している車両や人員の損害としては、2022年5月に東部ルハンスク州でドネツ川の渡河に失敗した時や、その半年後、ドネツク州ブフレダールでウクライナ軍の守備隊を急襲しようとした時に並ぶ激しさになっている。

ウクライナの調査グループ「フロンテリジェンス・インサイト」は「1週間半の間にロシア軍は1個旅団規模の兵力を失った」と報告している。第2諸兵科連合軍が当初この攻撃に投入した人員・装備の3分の1が失われたということだ。

対照的に、ウクライナ側の守備隊は車両を数両しか失っていない。ただ、歩兵部隊は比較的大きな損耗を被っている可能性がある。ウクライナの映画監督で現在は兵士として前線で戦うオレフ・センツォフは、ある接近戦についてこう述べている。「オーク(編集注:ロシア軍のことを指す)どもからは歩兵・装甲部隊が次から次に波のように押し寄せてきた」

「自分たちは幸運だった。あの日は何度も幸運に恵まれた。(歩兵戦闘車のM2)ブラッドレー2両の掩護を受けて包囲から脱出できた時も。けれど、この作戦に参加した者が皆これほど幸運だったわけではない」

アウジーイウカ攻略戦はロシア軍の大失敗になっているわけだが、リソース不足が原因ではない。たしかに第2諸兵科連合軍はDIYの歩兵戦闘車や、試作品だった装甲兵員輸送車博物館に展示してあってもおかしくないレベルの古い装甲兵員輸送車なども少なからず投入してはいる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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