ウクライナ空軍は先月、同様の貫通弾頭を搭載する英国製ストームシャドー巡航ミサイルで、被占領下クリミア半島セバストポリのドライドックに入っていたロシアの潜水艦を攻撃した。結果は壊滅的だった。ストームシャドーは潜水艦の鋼鉄製の腹を食い破り、卵の中の爆竹のように内側で炸裂した。
ウクライナ軍はM39を使って、飛行場や弾薬庫、補給基地、車両修理工場といった無防備な大きな攻撃目標を狙うことができる。M39A1があれば、たとえば指揮所など、無防備なより小さな目標も攻撃できる。さらにM48があれば、地下壕や橋など、防備のある小さな目標も破壊できる。
橋は、ウクライナがM48を手に入れた場合、最も価値の高い目標に据えられる可能性がある。ウクライナ南部のロシア軍の補給線はいくつかの重要な橋を通っており、最もよく知られているのがロシア本土とクリミアを結ぶケルチ橋(クリミア大橋)だ。
ウクライナ軍は7月、ケルチ橋を攻撃し、一部を崩落させている。爆薬を積んだ無人艇を橋の下に送り込んだとされる。攻撃によってクリミアのロシア軍の兵站は圧迫されたが、一時的なものにとどまった。先週、ケルチ橋は完全に再開通している。
ウクライナ側はすでに、橋を攻撃できる兵器を何種類か保有している。無人艇のほか、ストームシャドー、そのフランス版であるSCALP-EG巡航ミサイル、S-200弾道ミサイルなどだ。M48を入手できればウクライナ軍の選択肢はさらに広がるだろうし、ケルチ橋に対して2回目の大規模な攻撃を行う可能性も高まるかもしれない。
一方で、ウクライナ軍でロケット砲を運用する砲兵部隊にとっては難しい作戦になるとも考えられる。M48の射程は約300キロとM39のほぼ2倍に達するものの、前線からケルチ橋までは約240キロあるため、砲兵部隊は前線近くまで移動しなくてはならないからだ。つまり、発見され、対砲兵射撃を浴びせられるリスクが出てくる。
もちろん、これらはあくまで推測にすぎない。ホワイトハウスがすでにM39A1やM48を送ったという証拠はないし、近い将来そうする計画だという兆候も今のところない。ウクライナの外交官たちは、バイデン政権に懇願してM39を送ってもらうまでに1年かかった。M39A1やM48を得るのにどれくらいの労力や時間を要するのかは誰にもわからない。
(forbes.com 原文)