欧州

2023.10.13 09:00

ウクライナ軍大砲、ロシア軍の弾薬輸送列車を爆破 補給線の遮断狙う

Karasev Viktor / Shutterstock.com

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ウクライナ軍が6月初旬に反攻を開始する数カ月前、ウクライナの参謀らは明らかに少なくとも1つの大きな目標を据えていた。

その目標とは、ロシアが占領するウクライナ南部ザポリージャ州のトクマクを奪還するために、同州マラトクマチカから約80km南の占領されているメリトポリに向けて部隊を南下させることだ。

先日、ウクライナ軍の旅団はついにその目標を達成した。10月第1週目のどこかで、ウクライナ軍はおそらく米国製の高機動ロケット砲システム(HIMARS)を、トクマクを走るロシアの補給列車を射程に収められるところまで進めた。

8日に目を奪うような映像がネット上に出回り、そこには炎に包まれた列車が映っている。

これは大き意味を持つ。ウクライナ南部のロシア軍の兵站は現在、深刻な状況にある。トクマクは道路と鉄道の要衝であり、ロシア軍にとっておそらくウクライナ南西部で最も重要な拠点だ。

トクマクを通る陸路の補給線を遮断すれば食料や燃料、弾薬、兵士や車両の補充でその補給線を頼っている部隊を瓦解させられる。

つまり、トクマクを大砲やロケット弾の射程圏内にとらえることは、南部のロシア軍を撃破し、占領されている地域を解放するというウクライナ軍の最終目標に向けた大きな一歩だ。解放を目指す地域には2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島も含まれる。

この動きは21カ月にわたる戦争の終わりではない。終わりの始まりですらない。だがウクライナ側のこの戦争における主要な目標の一部を示す動きであり、戦争を長引かせ、占領地を維持するためのロシア側の意図をも示している。

ウクライナ軍がトクマクを通る補給路を標的にしている一方で、ロシア軍はさらに南に新たな補給線を確立するのに懸命になっている。トラックや列車をトクマク経由にしなくてもいいようにできれば、ロシア軍はウクライナ軍の作戦を戦略的に無意味なものにすることで、メリトポリまで伸びる軸に沿ったウクライナ軍の反攻を部分的に打ち負かすことができるかもしれない。

ウクライナ軍がトクマク近郊でロシアの列車を攻撃できるようになったのはつい最近のことだ。ストームシャドーといった地上攻撃ミサイル、対艦ミサイルのネプチューンやハープーン、S-200地対空ミサイル、トーチカ弾道ミサイル、数種類のドローンなど、ウクライナ軍はさまざまな長距離兵器を保有しているが、これらの兵器は通常、動かない標的に対して最も効果を発揮する。
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翻訳=溝口慈子

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