8輪駆動で重量が23トンあるBTR-90は数年間、試験的に国内の部隊に配備され、その後、モスクワ近郊クビンカにある第38科学研究所に保管された。
保管庫行きになった理由は、当時、新しいBTRが必要とされていなかったためだ。その前に開発されたBTR-80やBTR-70、BTR-60で間に合っており、供給も十分だった。
それから20年たち、状況は変わった。BTR-90が、ウクライナで再び使われているのだ。13日にネット上に出回った映像には、ロシアのウクライナに対する1年9カ月に及ぶ戦争に投入されたBTR-90が少なくとも1両映っている。
First ever BTR-90 in action. Less than a dozen made and stored in Russia #38 research institute https://t.co/yocNQ3exHL pic.twitter.com/4gAcocJO49
— Andrei_bt (@AndreiBtvt) October 13, 2023
ロシア軍が30年前の試作車両を長期保管庫から引っ張り出して前線に送り込んでいる理由は、想像に難くない。
ロシア軍は約2年にわたる激戦で約4000両の歩兵戦闘車両(IFV)と装甲兵員輸送車(APC)を失った。この数は、2022年2月時点でロシア軍が運用していたIFVとAPCのおよそ3分の1にあたる。
ロシア国営企業ロステックのウラジーミル・アルチャコフ副総局長の発言が正確であれば、ロシアの産業界は今年、新型・改修型の戦闘車両と兵員輸送車を1000両生産するかもしれない。
それでも損失を補うのには数千両足りなく、この分はどこからか調達しなければならない。ロシアは、長期保管庫に残っていた1960年代と50年代のBMP-1とBTR-50を使い果たしつつあり、次に第38科学研究所のような試験施設に目を向けているようだ。
BTR-90は悪い車両ではない。車体はBTR-80より大きく、口径30mmの2A42機関砲と、機銃掃射をはねのける装甲を備えている。保守もしやすいはずだ。使用部品はBTR-80のものと似通っており、同じ機関砲はIFVのBMP-2にも使われている。
BTR-90の問題はBTR-90自体にあるのではない。BTR-90の投入が示しているのは、ロシア軍需産業のひっ迫だ。ロシアは2025年まで、あるいはその後も続くかもしれない戦争のために、軍需産業を懸命に稼働させている。
ロシアはT-72やT-90などの戦車の生産を拡大しようと、制裁で入手できなくなった外国産の部品を国産のものに替え、T-80の新規生産も再開している。
だが、こうした取り組みには時間と金がかかる。その一方で、ロシア軍の連隊は絶え間ない戦闘での損失を補うために、新しい車両をまだ何千両も必要としている。連隊は入手できるIFVやAPCなら何だって構わないだろう。試作車両のBTR-90でもいいのだ。
(forbes.com 原文)