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2023.09.18

ウォルマート、アップル、MSから学ぶサプライチェーンの3つのメガトレンド

Getty Images

夏が過ぎつつある今、各企業の最高サプライチェーン責任者(CSCO)たちは、2023年を締めくくりつつ、2024年の計画を立てる時期に入っている。多くのCSCOたちは取締役会と情報交換を行なっているが、取締役の側は、以前よりも戦略的な思考を求める傾向が強まっている。

実際、四半期ごとの決算発表において「サプライチェーン」が言及される割合は、コロナ禍によってこの問題がクローズアップされて以来、倍増している。

サプライチェーン部門のリーダーたちは、担当業務の詳細な部分に集中しがちだが、こうした状況は彼らに、取締役たちとのコミュニケーションに関して課題を突きつけている。取締役は「長期間にわたる戦略的ガバナンスをもたらすこと」が役割であり、そうした役割に合った、大きな視野に立った視点を求めている。こうした相手には、うわべだけをなぞった一般論では役に立たない。むしろ、テクノロジーや経済、地政学的なメガトレンドが株主に与える影響を把握できるかたちで、事業計画を企業収益と結びつけることが、より良いやり方だろう。

ここでは、大半のサプライチェーン戦略に当てはまり、取締役たちも関心を持つであろう、3つのメガトレンドについて解説する。

1. 「顧客の問題解決」に即したデジタル技術の導入

デジタルトランスフォーメーション(DX)はかなり前から大きな話題となっているが、DXにまつわるトレンドは、テクノロジー投資の加速から、顧客が抱える特定の問題の解決に向けた、ターゲットを絞った投資へと移りつつある。

こうした考え方を実行している好例がウォルマートだ。同社は、デジタル部門で多くの実験的な試みを実践しながら、こうした施策について「顧客にメリットがある部分にのみ採用する」という明確な基準を示している。

この基準は、AIチャットボット(10万社を数えるロングテールの納入業者との間で、より有利な価格などの条件を交渉するボット)から、一刻も早くアイスクリームを食べたい顧客向けのドローン配送オプションまで、すべての事例に共通している。

ウォルマートの約束は、エブリデイ・ロープライス(特売ではなく、すべての商品を常に低価格で提供する)、豊富な品揃え、そして利便性だ。そしてそれを可能にしているのが、顧客のニーズに即したデジタル化なのだ。

ビジネスモデルのイノベーションは、こうしたメガトレンドをさらに喫緊の課題としている。電気自動車にシフトする自動車メーカー「ボルボ」、直販業者との競争に苦戦する一般消費財メーカー「P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)」、性能の良い機械だけでなく、エネルギー効率を向上させる仕組みを含めて販売する産業機器メーカー「シュナイダーエレクトリック」はすべて、こうした課題に直面する企業だ。どのケースにおいても「顧客が抱える問題」が変化している。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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