2. リージョナリゼーション(地域化)を通じたレジリエンス強化
アップルは、中国の製造業への過剰な依存から脱するための取り組みを進めているが、これは、より広範なトレンドの一端を示すものだ。つまり「コストを最小に抑えることを目的に構築されたグローバルなサプライチェーン」から「レジリエンスを重視した、地域的なサプライチェーンへの移行」というトレンドだ。地政学的な緊張が増し、労働者が自らの権利を主張し、消費者も自分が購入する製品がどこで作られたのかを知りたがる傾向が高まるなかで、リージョナリゼーション(地域化)という概念には強みがある。多角化を通じてリスクを管理できる点が、その大きなメリットだ。
レジリエンスには、気候変動への対応や、スコープ3(サプライチェーン)の二酸化炭素排出量をゼロに近づけるという目標に向けた取り組みも含まれる。物資の移動距離が短くなれば、輸送や保管の工程、在庫を減らすことにもつながり、これにより温室効果ガス排出量を削減できる。
またリージョナリゼーションは、水問題や生物多様性、さらには社会正義といったサステナビリティに関する懸念事項が、サプライチェーンの上流で危機を生むリスクを減らすことにもつながる。これは、アパレル業界が痛い思いをして学んだ教訓でもある。「目にしないものは考慮しない」という発想では、レジリエンスを持つサプライチェーンの運営などとてもできない。
3. 人材を活用して利益を確保する
AIを用いて事業計画や意思決定を迅速化するリジェネラティブ・ビジネス・プランニング(Regenerative Business Planning)などの新しいツールには、投資するだけの価値がある。というのも、商品の値下げや廃棄、あるいは逆に、需要増による供給不足といった事態を減らす効果が期待できるからだ。マイクロソフトは、ポストコロナのサプライチェーン危機への対応を通じて、この点を裏づけている。機敏な対応ができるサプライチェーンにより、混乱を極めた時期にも、同社は利益を確保することができた。