テクノロジー

2023.09.15 08:00

イーロン・マスク評伝が暴露した世界一の富豪の衝撃エピソード

安井克至

イーロン・マスク/ Photo by Chesnot(Getty Images)

著名ジャーナリストのウォルター・アイザックソンが執筆したイーロン・マスクの新たな評伝が9月13日に発売され、物議を醸す世界一の富豪の驚くべき新事実が数多く明かされた。

本書で明らかになった最大の新事実の1つは、マスクと彼の元妻でシンガーのグライムスの間に「テクノ・メカニクス・マスク」(通称タウ)という名の3人目の子どもが誕生していたことだ。この子どもの誕生によって、マスクの公に知られる子どもの数は11人となった。彼は「人類は人口減少の危機に直面しており、できるだけ多くの子どもを持つ必要がある」という信念を持っている。

そのうちの2人の子どもは、マスクが創業した脳電極埋め込み技術を開発する「ニューラリンク」幹部のシヴォン・ジリスとの間に生まれた子どもで、彼女は人工授精を通じてマスクとの間の双子を授かったという。

また2015年に、マスクはまだ完全に機能していないテスラの自動運転機能を使ってスペースXの南カリフォルニア本社に通勤しようとした。しかし、フリーウェイに引かれたラインがあまりにも色あせていたため、マスクの部下たちがスペースX社の見学と引き換えに、マスクのために特別に塗り直すよう政府職員を説得したとロサンゼルス・タイムズの書評は伝えている。

この本はまた、マスクとビル・ゲイツの間の小競り合いについても触れている。マスクは、テスラの株のショート(空売り)ポジションをとったことを認めたゲイツを「偽善者」と呼び「持続可能なエネルギーで動く自動車を作る企業の失敗で、なぜ金儲けをするのか」と怒りをあらわにしたという。

雑誌ニューヨーカーの書評では、マスクはまた「人々がWoke(ウォーク)と呼ばれる社会的正義を重視するエリート主義から脱しない限り、文明は進化しない」という思いから、ツイッターを買収をしたとアイザックソンに語ったという、

元NY市長ジュリアーニとの関係

本書はマスクに焦点を当てているが、他の著名人にも触れている。英紙ガーディアンによると、マスクは決済会社PayPalの事業を手がけた頃、会社を本格的な銀行にするための規制上の難関を乗り切るために、元ニューヨーク市長で後にドナルド・トランプの個人弁護士となったルディ・ジュリアーニに助けを求めたという。

しかし、ジュリアーニに会ったときに、彼らは失望した。マスクの同僚で投資家のマイケル・モリッツは「まるでマフィアの現場に足を踏み入れたようだった」と語り、ジュリアーニのチームが「チンピラのように私腹を肥やそうとする、シリコンバレーを知らない連中だった」と述べている。ジュリアーニが助言と引き換えに会社の10%の株を要求したときに、マスクと彼のチームは手を引いたという。

この本にはさらに、マスクの恋愛関係における奇妙な言動についても記している。彼は、最初の妻であるカナダ人作家ジャスティン・ウィルソンとの結婚式でのダンス中に「この関係では俺がアルファだ」という意味不明のセリフをささやいたという。

ウクライナ戦争への関与

この本に関して、最も話題になった事実の1つは、ロシアとウクライナの間で進行中の戦争へのマスクの関与についてだ。CNNは先週、この本の先行コピーを入手し、マスクが昨年、ウクライナ軍によるロシア軍艦隊への奇襲攻撃を止めるため、衛星通信スターリンクのウクライナ南部クリミア近くのネットワークを切断するようエンジニアに命じたと報じている。

アイザックソンによると、マスクの判断はロシアの高官らとの会話から、ウクライナのクリミア攻撃にロシアが核兵器で応じることを恐れたためだったという。

マスクは本の中でこう述べている。「スターリンクは戦争のためのものではない。人々がネットフリックスのドラマを見て息抜きをしたり、学校のためにネットに接続したり、平和的な良いことをするためのものであって、ドローン攻撃のためのものではないのだ」

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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