ヴェンカットさん:いい質問ですね!ポイントは2つあります。
まず1つ目について、競合他社の衛星データの空間分解能(解像度)は25〜30mほどですが、私たちの衛星は2.5から3mと高いこと。具体的には、競合他社は温室効果ガスが排出されている地域を検出することができますが、私たちLatConnect 60°は、温室効果ガスが排出されているパイプや燃料タンクまで特定することができます。
せりか:なるほど!パイプや貯蔵タンクまで特定できるなら、メタンが漏出してしまっても、すぐに対応できそうですね。
ヴェンカットさん:そうですね。ただし、空間分解能が高いということは、衛星から受信するデータの容量が大きくなるということです。競合他社の場合は、衛星が観測を実施してから、地上にデータが届くまでに数時間、あるいは数日かかっていると聞いています。さらに、打ち上げる衛星の機数が数機程度だと、衛星が同じエリアを観測できる頻度もあまり多くありません。
そこで2つ目のポイントとして、私たちは光通信ネットワークを構築しているワープスペースと提携して、容量が大きい画像であっても、15分程度で地上にデータを届けられる体制を計画しています。
「食」の課題を解決したい
せりか:ところで、ヴェンカットさんはどういう経緯でLatConnect 60°を創業されたのでしょうか。ヴェンカットさん:まずは、宇宙ビジネスに目を向けたきっかけをお話しましょう。大学で専攻を決めるときに、子どもの頃、アニメや漫画で見た宇宙船に驚いて、興奮したことを思い出したんです!それで航空宇宙工学を専攻することにしました。
大学卒業後は、北米の衛星メーカーで、宇宙機関向けに光学衛星やレーダー衛星を提案したり、製造したりするプロジェクトなどに長年携わっていました。
地球観測産業が始まった当初は、国家安全保障のために政府によって利用されるケースがほとんどでした。しかし、衛星データを農業や温室効果ガスの排出量モニタリングなどにも活かせることが分かると、大いに情熱が湧いてきました。この技術を防衛だけでなく、ほかの産業にも活用したいと思うようになったのです。
農業、つまり「食」は世界中の全ての人に関わるものです。農家が抱えている問題をより具合的に知るために、東南アジアに視察に行きました。サービスを提供しているマレーシアは、特に小規模農家が多く、収穫量の格差が問題になっていました。さらに、近年は気候の変化が激しくなり、洪水や干ばつが頻発しています。食糧生産の効率が落ちれば、食糧不足に繋がる恐れがあります。
せりか:農業や気候変動の課題解決を目指して、創業されたんですね。そういえば、LatConnect 60°という社名には、どんな意味が込められているのでしょうか。
ヴェンカットさん:これはまたいい質問ですね!世界の人口密集地の多くは、緯度プラスマイナス60°の範囲に位置しています。60°以上は非常に寒いですから、緯度プラスマイナス60°をデータで繋ぎたいという思いで、LatConnect 60°(※2)と名付けました。
※2 「Lat」は英語で「緯度」を意味する「Latitude」の略語