宇宙

2023.08.27

日米ロ印がいま「月へ挑む」理由とその莫大な経済効果

NASA

2022年11月、JAXAの超小型機「OMOTENASHI」が月面探査を試みたが、月へ向かう軌道上で通信途絶した。2023年4月には日本の民間企業ispaceによる探査機「シリーズ1ランダー」、8月19日にはロシアの「ルナ25」も月面着陸に挑んだがともに失敗、月面に激突した。

そして8月23日にはインドの「チャンドラヤーン3」が月面着陸を試み、世界ではじめて月南極への軟着陸に成功。同国は旧ソ、米国、中国に続いて「月面への着陸に成功した4番目の国」となった。さらに同月26日にはJAXAの小型着陸機「SLIM」が打ち上げられ、米民間企業による着陸機は2023年中に2機、2024年にはさらに5機が予定されている。

いま月への挑戦は加熱状態にある。各国各社はなぜいま月面を目指すのか? そこにはどんな経済効果が目されているのか?

月の「水からなる氷」

米国主導のアルテミス計画における有人月面探査は2025年に実施予定(NASA)米国主導のアルテミス計画における有人月面探査は2025年に実施予定(NASA)

月の地中には、水の氷があることがわかっている。この氷こそが月開拓によって経済効果を生み出すキーアイテムとなる。

手順としてはまず、太陽電池パネルとドリルを月面に送り込む。電動ドリルで月面を掘削し、氷を採取すれば、水が得られる。さらにその水を電気分解すれば、酸素と水素が生成できる。

水と酸素はクルーの糧となるが、それだけではない。酸素をマイナス183度以下、水素をマイナス253度以下まで冷却すれば、液体酸素と液体水素が得られ、この2液はそのままロケットの推進剤として活用できる。つまり、月面で氷が採取できればロケット燃料を現地調達することができ、輸送機は片道分の燃料を搭載するだけでよいことになる。

また、トヨタが開発中の有人月面ローバー「ルナクルーザー」も、液体水素と液体酸素で動く。月面は赤道付近では夜間にマイナス170度、局地のクレーター内であればマイナス250度まで温度が下がるため、極低温燃料の現地生産は実現可能だと考えられている。
次ページ > 2024年に始まる氷の掘削作業

編集=安井克至

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事