それから1年半後、ウクライナ空軍は道路などへの疎開作戦を芸術の域にまで高めているようだ。ロシア軍が基地にミサイルを撃ち込もうとするたびに、そこをもぬけの殻にしてみせている。
ただ、数カ月後にも届き始めるF-16の場合、こうした道路作戦はもっと難しくなりそうだ。台湾空軍はF-16を高速道路に離着陸させる演習を定期的に実施しているものの、通常は同じ道路5本を使っており、それらの道路は慎重な扱いを要する米国製航空機のために空軍が入念に保守している。
F-16を全備重量で運用するには、きれいに整備された約760mの滑走路が必要になる。F-16にはFODを排除する仕組みがなく、胴体下部の大きく開いたエアインテークが破片などを吸い込んでしまう。
対照的に、グリペンはタフで敏捷な小型機で、F-16よりも分散した路上での作戦に向いている。MiGのようなFOD遮蔽扉はないものの、頑丈で長い着陸装置を備える。さらにスラストリバーサー(逆噴射装置)や、ブレーキの役割も果たすカナード(前翼)があるため、約460mのきれいな路面から作戦行動が可能だ。
グリペンなら、ウクライナ軍は短い滑走路や幹線道路に駐機場所を離散させることでロシアの攻撃をかわし続けられるだろう。対してF-16の場合、使える道路などの選択肢は狭まるかもしれない。
いずれにせよ、先に届くのはF-16になる。デンマーク空軍が保有していたF-16が年内に到着し始めるはずだ。グリペンについては、供与をめぐってゼレンスキーがスウェーデン首脳と詰めの作業を進めているとみられる。
ゼレンスキーは19日、「ウクライナのパイロットはすでにグリペンのテストに参加している」と明かし、スウェーデンのウルフ・クリステション首相と「グリペンをウクライナに譲渡するためのさらに踏み込んだ措置について話し合った」と述べている。
(forbes.com 原文)