BTM-3は、塹壕(ざんごう)掘削車(トレンチャー)だ。名前のとおり、もっぱら塹壕(トレンチ)を掘るためだけの車両である。ディーゼルエンジン駆動のAT-T砲兵牽引車の車台(これも元々はT-54戦車の車台がベース)に、チェーンソー式掘削機を取り付けてつくられている。
重量37トン、乗員2名のBTM-3は、深さ約1.5m、幅約90cmの塹壕を最高で毎時約730m掘り進めることができる。掘削スピードとしては高速だ。
ロシア側に関しては、旧ソ連時代の古いBTM-3を引っ張り出して使っていてもそこまで驚きではないかもしれない。なにしろ、ウクライナの大半のエリアで攻撃から防御に転じたロシア軍は昨冬から今春にかけて、数百kmないし1000km超の塹壕線を築いていたからだ。だが、BTM-3は実はウクライナ側でも投入されていたことが、このほど映像で確認された。
先週ネット上に出回った動画には、ウクライナ南部ザポリージャ州の未舗装路を、ウクライナ軍の旧ソ連製BTM-3が走行している様子が映っている。
A BTM-3 High-Speed Trenching Machine of the Ukrainian Ground Forces reportedly spotted on the move near the Frontline in the Zaporizhzhia Region; these Machines are Rare to see in the Russian Armed Forces let alone in Ukrainian Service with them only having maybe 10 BTM-3s. pic.twitter.com/RlcBdRhvVm
— OSINTdefender (@sentdefender) August 8, 2023
ザポリージャ州はウクライナ軍が反転攻勢を進めている場所の一つだ。ウクライナ軍は長く待ち望まれていた反攻を6月4日に始めて以降、複数の攻勢軸で数km前進している。
塹壕はこれまで、両軍の戦いを文字通り形づくるものになってきた。ロシア側はウクライナ軍の前進を阻むために塹壕を掘った。今度はウクライナ側が、前進したエリアで陣地を固めるために塹壕を掘っているというわけだ。
BTM-3は、ロシア側ではBTM-4、ウクライナ側ではPZM-3といったほかの軍用塹壕掘削車や、民間の掘削車とともに、塹壕づくりで主導的な役割を担ってきたとみられる。