欧州

2023.08.09

ウクライナの巡航ミサイル爆撃機、ロシア軍が破壊試みも度々失敗

ウクライナ軍のスホーイSu-24爆撃機(Oleksandr Naumenko / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍の第7戦術航空旅団が運用する40年前のスホーイSu-24爆撃機は、北大西洋条約機構(NATO)の支援により、強力な長距離攻撃システムとなった。

ロシア空軍がウクライナ西部スタロコスティアンティニウにある飛行場を拠点とする同旅団を壊滅させようと全力を尽くしているのはそのためだ。だが同旅団は、1年半にわたり戦い続け、ロシア軍の攻撃をかいくぐってきた。

ロシアが2022年2月24日にウクライナに本格侵攻したとき、同旅団は双発2人乗りのSu-24M爆撃機とSu-24MR偵察機を数十機保有していただけだった。

ロシア軍が侵攻直後に行ったウクライナ空軍基地へのミサイル攻撃は、大きな損害を生まなかった。NATOの情報機関からの内報を受けたウクライナ空軍は、航空機や兵士を郊外の小さな飛行場や道路沿いの仮設滑走路に避難させていたのだ。

重力で落ちる無誘導の爆弾を通常積んでいる第7旅団のSu-24Mは、直ちに戦闘任務を開始。一部のSu-24Mは、侵攻初日の2月24日、首都キーウ郊外のホストーメリ空港周辺に展開したロシア軍のパラシュート部隊に対し、低空飛行で爆弾を投下した。

侵攻後の最初の1年は同旅団にとって厳しいものだった。17機のSu-24がロシア軍に破壊され、乗員数十人が犠牲になった。だがウクライナ空軍は引退したパイロットやナビゲーターを呼び戻し、保管所で放置されていた多くのSu-24の一部を復活させることで、同旅団の戦力をなんとか維持した。

そして今春、英国が供与したステルス能力を持つ巡航ミサイル「ストームシャドー」が、同旅団の運命を大きく変えた。英国とウクライナの技術者らは、Su-24MとSu-24MRを改造し、ストームシャドーを2発搭載できるようにした。

重量1.5トン、GPS誘導を備えたストームシャドーの射程は最長約250kmだ。このミサイルを手にした第7旅団は、もはや厳重に防衛されている標的を攻撃するためにその上空を飛行しなくてもよくなった。その代わり、ウクライナ側が支配する比較的安全な空域を飛行しながら攻撃を仕掛けることができる。

これにより同旅団の損失ペースは大幅に低下。2022年には平均して月に1、2機の爆撃機を失っていたのが、今年になってから損失はほぼ皆無だ。
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翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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