ビジネス

2023.08.22 08:30

世界ランク入りVC・中村幸一郎、「20代は、居心地が悪いのは当たり前」

Sozo Venturesファウンダー兼ゼネラルパートナーの中村幸一郎

「当時、ヤフーのような大規模インターネットシステム運用の経験者は、ほとんどいなかった。実は、すごく大きなことをやっていたと、後になって気がつきました。アメリカで何年か前に流行ったビジネスを日本に持ってくるスタイルを『タイムマシン経営』って言いますけど、僕の場合は『タイムマシン・プロジェクト』だったんです。誰も知らないところに放り込まれて、乗り越えたら、知識と経験が身について、いつの間にかニッチな分野のエキスパートになっていた。まさに、ライトタイム、ライトプレイスなんです」
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立ち上げ期のITベンチャーから大企業に入社した中村は、そこにある膨大なリソースに驚き、次々と提案をする新人であった。

「部署の説明を聞くと、やりたいことがいっぱい出てくるんです。『これも、できるんですか』『この会社、つながってるんですか』みたいな驚きの連続でした」

中村には面白がる才能、そして、やりきる胆力があった。
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「自分で『これがやりたい!』『これをやります!』って、社内で言ってまわるんです。『お前、何言ってるかわかんない」ってみんなに言われましたけど、そのうちに周りも諦めて、認めてくれて。一生懸命頑張って、そういう提案をいろんな人に相談していくと、何人かに1人はすごく助けてくれたりします。普通の組織なら、死ぬほど反対したい人っていないんです。だから、ずっと一生懸命に言ってると、最初反対されても、最後は勝てるんですよ。熱量が違うから」

そうして、後にも生きる、ビジネスマンとしてかけがえない経験を積んでいく。ではなぜ、中村は組織を動かせたのか。

「ひとつだけ自分が誇れることがあるとすると、あまり利己主義的ではなかったことですかね。『このプロジェクトを成功させたい』とか『このビジネスを、何とかしたい』と考えて、そのための最善の選択をしていく。自分が何かを成し遂げたり、いい格好をするために、何か行動をしたことは一度もないし、まったく関心がないんです。純粋にプロジェクトの成功のために動いてきたと、自信を持って言えます」

勃興しようとしている新しい領域で、蓄積された知識を持つ人たちをつなぐ、通訳の役割を果たしていく──。中村が20代に飛躍できたのは、インターネット産業のなかで、こうした役割を担ったからに他ならない。「もうこのパターンしかないですから、私」という中村は、20代でおぼろげに見えた、自身にフィットする法則を、後に職業とする。38歳で、ベンチャーキャピタリストへと転身した。

「誰も経験者がいなくて、多様な人が参入してくる領域には、新しい人がのし上がるチャンスがあります。新しく勃興する領域は、大きく伸びる可能性もあれば、全滅してしまう可能性だってあります。そういうのが怖い、耐えられない人もいますが、自分にはそれがすごく面白いと思えたんです」
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