起業家

2023.08.01

グローバル資産管理時代のみんなの金融機関へ

(左)有安伸宏 エンジェル投資家(右)中村 仁 ブルーモ・インベストメント

中村仁は2022年6月、「投資をみんなのものに」をミッションとしてブルーモ・インベストメントを創業。同社は長期資産の形成に特化した証券会社の立ち上げを進めており、米国株・ETF(上場投資信託)を取引できる資産形成アプリを開発。

銘柄や投資配分を指定して日本円を入金すると、両替や売買が自動で代行される仕組みで、複数銘柄に資産を分散した積立投資を効率的に行える。23年4月には、シードラウンドで総額8億円の資金を調達。現在、第1種金融商品取引業に登録申請中で、アプリは今夏に招待制からのリリースを目指している。

エンジェル投資家の有安伸宏は、ブルーモ・インベストメントの会社設立直後に3500万円を出資。プロダクトも法人格もない段階で有安が投資を決めた理由とは。

有安:エンジェル投資家として大事にしているのは、その起業家に本当の情熱があるのか、やり抜く力があるのかという視点。そこで初回面談のときには、起業家の目をよく見るようにしています。本気の人は目を見たらわかるんですよね。中村さんはマジな目をしていました。彼の話には一貫性があって、なるほどなと。

中村:有安さんには、僕の生い立ちについて書きためた厚いノートを事前に送って読んでもらいました。要約すると、僕はバブル崩壊で急激に貧しくなった家庭で育ったこともあり、世界の金融システムをよくしたいという思いをずっと抱えて生きてきたんです。大学卒業後は財務省に入ったのですが、なかなか内側から金融制度を変えることは簡単ではなくて、それで外に出てスタンフォード大学で学び、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経験を積んで起業したという経緯です。

有安:1カ月後に再度お会いして、プロダクトのプロトタイプを見せてもらったのですが、クオリティが高くて驚きました。キャリアが華々しい起業家の場合、見え張りだったり、傲慢な人柄だったりしないかを疑うことが多いのですが、中村さんには人の意見を聞く柔軟性があり、チームを動かして、しっかりとエグゼキューションができている。

中村:実は最初に構想していたのは、「ダイレクトインデックス」という投資手法を用いた複雑な仕組みのものだったんです。それでは一般の資産形成層向けには難しすぎるという意見を有安さんからいただき、より手軽に資産形成ができるシンプルな仕組みに変えたのが現在開発中のプロダクト。初回面談時からの変化の差分の大きさを評価してくれてうれしかったです。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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私がこの起業家に投資した理由

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