起業家

2023.08.01 09:30

グローバル資産管理時代のみんなの金融機関へ

Forbes JAPAN編集部
有安:それで具体的な出資の話になったのですが、そのタイミングで会社のバリュエーションが上がったんです。フィンテック企業で、証券会社のライセンスを取る必要があるなどの事情で、創業時の一般的なスタートアップと比べて数倍でした。

ただ、大きく成功することを前提にしたとき、出だしの金額は誤差の範囲。交渉なしに出資を決めました。直近のシードラウンドではCFOのような役回りのお手伝いをさせてもらいました。プロダクトができあがっていない状況で8億円の調達はハードルが高いことですし、スタートアップのファイナンス環境がよくないなかで、投資に踏み切ってくれたVCさんには本当に感謝です。

中村:今回でいうと、最初にリード投資家になるはずだったVCさんが、直前でキャンセルする事態がありましたね。でも、このくらいのハプニングはつきものだと思っています。みんなが投資したがる、うまくいくと思うビジネスを僕がやる必然性はないし、個人的には、不確実性の谷というか、どうしても証明できないギリギリのところでリスクを取って事業を立ち上げることに価値があると考えていますから。

有安:人生一回きりだからね。合理性を重視するよりも、内発的な動機で、絶対にこれをやりたいという強い思いをもつ起業家が、結果的に成功しているように思います。

中村:スタンフォードのMBA時代の同級生に、アンダーソン・スマリというインドネシア人がいるんです。彼は在学中にアジャイブという投資アプリで起業して、2年間で爆発的にヒットして会社はユニコーンになりました。僕がもっている目線は彼と同じ。日本人が日本経済のリスクを感じ始めて、米国株などのグローバルに資産を移し始めていることは、ひとつのマクロトレンドです。この先5年くらいで、いまの時代を代表する金融機関をつくりたい。

有安:最初の何もない時期から社会のなかでポジションを取っていきたいと宣言する起業家って、芯があって強いし魅力的。中村さんの高い目線には共感しますし、その実現をこれからも応援していきます。


ありやす・のぶひろ◎起業家・エンジェル投資家。ユニリーバ・ジャパンを経て、2007年にコーチ・ユナイテッドを創業。13年に同社をクックパッドへ売却。15年にTokyo Founders Fundを共同設立。日米のスタートアップ130社へ出資。

なかむら・じん◎東京大学法学部卒業、同大学院経済学研究科修了。財務省を経てスタンフォード大学でMBA取得。帰国後はマッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルティングに従事。2022年6月にブルーモ・インベストメント創業。

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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