フォルケと出会い、今回の企画を仕切ったリバティのマネージングディレクターであるアンドレア・ペトッキに、そのように展覧会の感想を伝えると、彼は「前衛とは、歴史のあるタイミングでの、あるパイオニアによる未来の可能性の解釈です」とし、次のように語りました。
「19世紀、新たなデザインの方向性を示したウィリアム・モリスもそうでした。彼の新しいスタイルは、視覚芸術と装飾芸術の両方の古典を非常に意識していました。一方、ジャコモ・バッラやヴォーティシズムを率いたパーシー・ウィンダム・ルイスのようなリーダーたちは、芸術が持つ新たな可能性、人間や自然の社会的表現への新たな眼差しを考察していましたが、それだけではありません。
彼らの作品は、その後何十年も経ってから、ファッション、演劇、そして60年代にバーナード・ネヴィルが発表したジャズとタンゴ、さらにそれから50年後にフェデリコ・フォルケが発表したフューチャーリバティにインスピレーションを与えたのです。
一般的に、前衛はその時代に理解されることは少ないです。しかし循環的な性格があることで、後の時代の社会で、記憶と意志がむすびつき、新しい形で再び爆発する。殊に社会がこれらの先駆者たちの疑問のいくつかに再び答えようとしているときに、爆発します」
このペトッキの答えを聞いて、つくづく企業のリーダーはヨットのスキッパー(艇長)のようなものだと思います。風と潮流を読みながら、目的地にむかって斜め方向に進路をジグザグと進むわけですが、このアイデアをペトッキに話すと、「創業者のリバティが、まさしく、その比喩を好み、ロンドンのチューダー様式の建物の上に黄金の船を置いたのです」と教えてくれました。
アートそのものもさることながら、アートヒストリーをどう血肉化するか、これは個人の人生においても、企業経営においても同様です。歴史のある会社だけでなく、スタートアップについても当てはまります。中野さん、19世紀の英国史やファッション史をみてきた中野さんにとって語れるアングルは多いのでは、と想像します。