働き方

2023.08.13 08:30

終わりの見えない「リモートワークの生産性」議論、どう解決すべきか

生産性の問題

しかし、オフィス以外の場所で働く従業員は生産性が高いのだろうか?

スタンフォード大学の報告によると、労働者は自宅の方が生産性が高い(約7%高い)と考えているが、管理職は低い(約3.5%低い)と考えている。また、アトラシアンの世論調査によると、回答者の10%の人が、もし自分が在宅勤務をすると「生産性が低い」、あるいは「コミットメントが足りない」と思われるだろうと答えている。

こうした認識上の問題だけでなく、スタンフォード大学が複数の研究を分析した結果では、研究の性質や条件にもよるが、リモートワークによって生産性が10~20%低下すると報告されている。

生産性を調査する多くの研究があるように、リモートワークで生産性が低下する理由についても多くの説明がある。スタンフォード大学の論文によると、コミュニケーションや仕事の調整における課題、コミュニケーションネットワークの劣化や新たなつながりの減少、マルチタスクなどの諸要因による創造性の低下、学習・指導・フィードバックの減少などが挙げられている。

リモートワークで生産性が低下するもう1つの大きな理由は、規律と自制心に関連している。Upgraded Pointsのデータによると、リモートワークをしている人は、SNSの閲覧(回答数の75%が経験あり)、オンラインショッピング(同70%)、動画の視聴(同53%)、旅行の計画(同32%)など、仕事以外の活動で画面の前に時間を費やしている。

また、家事(同72%)、用事(同37%)、昼寝(同22%)、医者通い(同23%)、飲酒(同12%)など、パソコンから離れて過ごす時間もある。リモートワークでは1日3〜4時間しか働かないという人もいる(全回答者の13%)。

社員の声

皮肉なことに、気が散って仕事以外のことに時間を費やしているという報告がある一方で、リモートワークの生産性は十分高いと答える人もいる。これは複数の調査で報告された結果だ。

Upgraded Pointsのデータによると、女性の63%、男性の55%がリモートワークの生産性が高いと答えている。また、mmhmmの調査によると、51%の従業員が、非同期勤務や自分でスケジュールを決めることが生産性に貢献していると回答している。同じくmmhmmの別のデータでは、43%の人がオフィスでの仕事に最も生産性を感じ、42%の人が自宅での仕事に最も生産性を感じていることがわかる。

一方、オフィスにいる方が生産性が高いと感じる従業員もいる。オフィスで働く人とリモートで働く人を比較した場合、オフィスで働く人の方が、忙しい日の生産性が高まっていると答える割合が11%多かった。また、Deputyのデータによると、リモートワークの社員は、オフィス勤務やハイブリッドの社員に比べて、共同作業で生産性を感じる割合が33%低いと回答している。

また、興味深いことに、米国国内の労働者の15%を占める政府職員は、仕事の大半は対面で行うのが最適であると答えている。例えば、新規プロジェクトのキックオフ(71%が「はい」と回答)、プロジェクトの軌道修正(同70%)、会議(同62%)、ブレーンストーミング(同58%)、機密業務(同61%)、ITサポート(同58%)などである。
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翻訳=江津拓哉

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