問題は、このような組織が分散した労働力に対して同じ機会を保証し、そして帰属感を提供できるかどうかだ。全員がリモートで働く職場を従業員と管理者が持続できるかどうかは不確かなのだ。「完全バーチャルで働く最大の課題の1つは、職場の社会的バロメータを測る能力が低下することです」とレンセラー工科大学の経営学教授ティモシー・ゴールデンは述べている。「バーチャルワーカーは、他の人が職場の出来事にどう反応し、問題への潜在的な反応をどう評価し、同僚が起こす問題をどう見るかを判断する能力が低下しています」
完全バーチャルの職場に対する経営陣の意欲も最近の数カ月で落ちてきたようだ。「全体として、ビジネスリーダーや経営幹部は新型コロナ前に比べてオフィスでの勤務に対する柔軟性をより受け入れているようですが、多くの幹部は100%のバーチャル労働には抵抗しています」とプラネットグループの最高人事責任者マーニ・ヘルファンドはいう。「過去6カ月間で、私たちのリクルーターの約6割が、完全リモートでのポジションの数が減少していることに気づいています」
しかし、バーチャルな職場を成功裏に率い、維持するための適切な要素の組み合わせを見つけたビジネスリーダーもいる。たとえば、スタンフォード・ローズ・アソシエイツは2019年末に物理的なオフィスを廃止したと、子会社を率いるマーク・フィリップスが語っている。彼は「私たちは多くの企業とともに、バーチャルな環境でのポジティブな職場文化をどのようにつくり出せるかを模索してきました」という。「2019年以降ずっと、私はすべての従業員と会うために出張を繰り返してきたので、何度か各人との対面での会議を行っています。しかし、今日まで全員を同時に1カ所に集めたことはありません」
ヘルファンドも同意して「対面での仕事が必要な特定の職務を除けば、すべての従業員は完全にリモートな環境で長期間働くことができます」という。だが同時に彼女は、100%のバーチャルな仕事はキャリア初期の人々には適していないかもしれないと警告する。「たとえば、新しく採用したリクルーターの一部は大学を卒業したばかりです」と彼女はいう。「彼らの最初の本当の仕事ということで、多くのことを学ばなければいけないのですが、それは100%バーチャルだと不可能なのです」
また、ゴールデンによれば、バーチャルワーカーは「インフォーマルなコミュニケーションに影響が出ることが多く、また、自宅で働いていると他人を無意識のうちに観察することが簡単にはできないため」支障が出ることもあるという。