働き方

2023.05.13

人の顔を覚えるのが苦手でも、うまくネットワークを構築する方法

Tara Moore / Getty Images

以下は、あるニューヨーカー、ジェシカ・スチュワートの話だ。

新しい職場になり、4カ月目を迎えようとしている。もうしばらくすると、同僚は、私がまだ顔を覚えていないこと、そして今まで一度も同僚を認識できたことがなかったということに気づくだろう。

私は生まれた時から、軽度の相貌失認(Prosopagnosia=フェイスブラインド症状、人の顔を認識することができない認知障害)を抱えている。フェイスブラインドは脳卒中や外傷など、神経学的な損傷によって生じることもあれば、先天的に現れることもある。重症の場合、配偶者や鏡に映った自分の姿さえも確認できない。診断が難しい病気だが、50人に1人の割合で発症すると言われており、軽症の人は自覚しないまま一生を過ごすこともあるという。

私の場合は、顔を覚えられるまでに30回ほど同じ顔を見る必要がある。とくに800人以上の従業員がいる会社で働き、人口800万人の都市に住み、そして仕事と自己啓発のためネットワークづくりが欠かせないものとなってからは、窮地に立たされることがしばしばあった。

実は非常に軽度なために自分がフェイスブラインドであることに気づかず、ネットワーキングが億劫であるとか、たんに「人の顔を覚えるのがちょっと苦手」といった人は読者にも少なくないのではないだろうか。

そんな諸氏のために、以下、私の対処法をご紹介しようと思う。

1)話せるように準備しておく

異業種交流会など社交の場では、フェイスブラインドを抱える人にとってはかなり厄介な事態が発生する。人と握手し、目を見て、名前を繰り返すうちに、頭の中に「ハテナマーク」が飛び交い始めるのだ。

顔を覚えていない可能性があるけれど、それを伝えるべきだろうか? 失礼ではないだろうか?この人には目立った特徴が見つからないから覚えられない! 一体この交流会には、こんなにも不安を感じるだけの価値があるのだろうか?

確かに社交不安障害は、フェイスブラインドがもたらす心理的副作用のひとつだ。でも、不安を軽減するためには、戦略を用意し、真っ向から対処できるよう準備すればよいのだ。

私は普段、誰かに呼び出されるまでフェイスブラインドの話題には触れないようにしている。

─以前、お会いしましたね。ちょうど1週間前、アンナの誕生日パーティーで30分ほどお話をしました。

おっと!このような状況になった場合、私はシンプル、かつ誠実に説明する。

─お察しの通り、私は顔をよく認識できません。軽いケースではありますが、これはフェイスブラインドと呼ばれる神経学的疾患です。とにかく、またお会いできてうれしいです!

自分の脳の働きを簡潔に説明し不意をつかれないようにすることで、会話の主導権を握り、不安を抑えることができる。また、臨床用語を使うことで、軽薄な印象を与えたり、怠慢な印象を与えたりすることを避けることもできるのだ。ほとんどの人は、フェイスブラインドを打ち明けると、その正直さを評価してくれる。
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編集=伏見比那子・石井節子

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