働き方

2023.05.13 20:00

人の顔を覚えるのが苦手でも、うまくネットワークを構築する方法

石井節子
2)ディテールに親しみを感じる

「ディテール」は、顔面失認を補うための私の秘密兵器だ。人間の脳の可塑性により、生まれつき視覚などの感覚が欠けている人は、味覚や嗅覚、聴覚が向上することがある。私は顔を認識できない分、細部へのこだわりが強くなっているのだと思いたい。初対面の人と話し始めた瞬間、私は100%の集中力を発揮し、彼女が会話の中に落とし込むかもしれない有意義な細部に耳を傾け、顔のない自分の心象風景を作り上げるのだ。

私にとって人の顔は、そこに何もないように見え、また他の誰かの顔のようにすら捉えられない。

しかし、共通の友人の名前が出てきたり、出会った場所を思い出したりすることができれば、私はその人のパートナーが昨年の春に新しい仕事を始めたことや、その人がヒューストンストリートのアパートから引っ越す予定だったこと、副業として旅行ブログを書いていることなどを思い出す。逆にいえば、顔を認識できない私は、その人の声や話し方、歩き方、動き方、歴史などを含めて、より複雑な人物像を頭の中に作り上げる必要があるのだ。

私は顔認識が苦手であるため、自分が相手に興味をもっていることを証明しなければならない、というプレッシャーを常に感じている。細部を覚えていることで、誠意を示すことができるだけでなく、その人との関係性を深めることもできる。実際には、そこまで傾聴して、細部を覚えてくれようとする人はあまりいないものだからだ。

3)気分を害する人がいる可能性があることを受け入れる

自分の体裁を取り繕ろおうとしないこと。 フェイスブラインドの程度にもよるが、たとえ繕おうとしてもどうせ失敗する。私は数えきれないほど、「はじめまして!」と自己紹介し、「もう会ったことがある」と告げられたことがある(そのため、"Nice to see you "としか言わないように訓練中だ)。

せっかく説明しても、相手が理解してくれるとは限らないし、相手がフレンドリーであるとも限らない。また、パーティーなどで私が認識できないとネガティブな感情を私に抱く人もいるが、私自身も繊細で傷つきやすいたちなので、その人の気持ちはよく理解できる。

ネットワークが広がるにつれ、こうした気まずい出会いは増える一方である。しかし、最初の気まずい瞬間を乗り越えれば、築きがいがあり、持続さえるに足る人間関係や仕事上の関係を築くことができる。新しい関係に否定的な経験を持ち込んだり、ひきずったりしてはいけない。無意味だから。

あなたは、自分が人の顔を覚えることが苦手、もしかしたらフェイスブラインドかも、と感じている? もしそうでも、それは決してあなただけではない。そして、あなたのそんな弱点は、ほかの人と比べてネットワーキングの方法を少しだけ変えるかもしれないだけで、人との豊かな付き合いを不可能にすることは絶対にないのだ。

「人の顔を覚えるのが苦手」な場合、以上の戦略も参考に、あなたなりに奮闘し、上手にネットワークを構築してほしい。

編集=伏見比那子・石井節子

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