実のところ、ウクライナには自国での調達という選択肢もある。ただ、やはり生産規模の拡大は難しい気がする。ウクライナ国産の中距離SAMシステム「SD-300」は、旧ソ連で開発されたS-300の代わりになりうるものだが、そのためには大量に生産する能力が欠かせない。
SD-300自体は秘密でもなんでもない。開発を手がける国営キーウ設計局「ルーチ」は、ロシアが2022年2月に全面侵攻を始める前、このSAMシステムを積極的に売り込んでいた。
当時、SD-300は量産できる状態になかったが、もしかすると状況は変わっているのかもしれない。北大西洋条約機構(NATO)議員会議のウクライナ代表団トップを務めるイェホル・チェルニエウは、ウクライナには独自の「最新防空システムがある」と地元メディアに語り、「試験では上々の成果を収めている」とも明かしている。
もっとも、彼がSD-300について語っているという保証はない。一方で、別の中距離SAMのことを言っているのだとすると、それが何なのかも不明だ。いずれにせよ、ウクライナがもつ防空関係の最良のリソースを結集して設計されているのがSD-300だ。
SD-300は指揮車、自走式4連装発射機、直径300mmのミサイルで構成される。ミサイルは、直径が同じウクライナ製地対地ロケット弾「ヴィリハ」と同じパーツを使っている可能性がある。
レーダーはさまざまな種類に対応しているに違いない。ミサイルには、目標に到達する寸前の誘導のために、独自のアクティブレーダーシーカーが搭載されている。シーカーはウクライナの防衛電子機器メーカー、レディオニクス製ではないかと思われる。