映像を見るかぎり、ウクライナ軍の部隊は米国から供与された対人・対装甲用クラスター弾「DPICM(二重用途改良型通常弾)」を、まさに米陸軍の教範どおりに使用しているようだ。まず榴弾(HE)を試しに撃ち込み、そのあとにDPICMを飛来させる──という方式だ。
DPICMからは手榴弾サイズの子弾88発がばらまかれ、その範囲はフットボール場より広くなることもある。
ウクライナ軍の空挺部隊、第79独立空中強襲旅団のドローンが20日かそれ以前に赤外線カメラで撮影した映像を注意深く見てみよう。ドローンのカメラは、ウクライナ軍が6月4日に開始した反転攻勢の一環で攻撃を続ける東部ドネツク州南部で、細く伸びた樹林帯が途切れた場所にピントを合わせている。
最初、ロシア軍の歩兵とみられる複数の白い人影が、その隙間を小走りで移動する様子が写っている。DPICMにとっては格好の餌食だ。アントニー・ブリンケン米国務長官がいうように、DPICMは「地域目標(エリアターゲット)を攻撃するのに非常に効果的で信頼性の高い砲撃能力」だからだ。
その後、まず隙間の端のあたりにウクライナ軍の榴弾が撃ち込まれ、炸裂する。だぶん、近くに展開しているウクライナ軍第55独立砲兵旅団のM777榴弾砲による砲撃だろう。撃った部隊は、地面との衝突を引き金とする榴弾の爆発で探りを入れたうえで、次に撃つDPICMの信管の設定をしたようだ。
米陸軍の野戦教範(フィールドマニュアル)には、重量約47キログラムのM483A1型DPICMについて、放出される子弾はそれぞれ「2.5インチ(約6.3センチメートル)超の均質圧延装甲を貫通し、(あるいは)人員を無力化できる」とある。ただ、子弾が散布される範囲は、親弾が炸裂する高度によって変わってくる。
つまり、DPICMを使う際には高度を正しく設定することがきわめて重要で、そのためには地面の高さを正確に知る必要がある。だから先に榴弾を撃って、地面がどうなっているかを確かめることが求められるというわけだ。
米陸軍も野戦教範でまさにそのように指南している。いわく「射撃調整任務においては、M483A1弾を節約するため、実行可能な場合は常に調整段階でHEを射撃すべきである」と。
映像に戻ると、榴弾を撃ち込んだウクライナ軍の砲兵部隊は、続いてDPICMを発射している。親弾は樹木が途切れた箇所の数メートルから数十メートル上空で炸裂しているようだ。
子弾は一帯の原野や木々、残っていたロシア兵に降り注いだ。ウクライナ軍はこの攻撃でミハイル・ルーチンというロシアの人気軍事ブロガーも死亡したとしている。
米国製のDPICMがウクライナの前線に到着してから日は浅いが、ウクライナ軍の「まずHE、次にDPICM」という戦術は早くもロシア側の知るところになっている。
あるロシア人ブロガーは、DPICMによる攻撃を受けたロシア兵のものとみられる、小さな穴が数箇所空いた防弾チョッキの写真をテレグラムに投稿し、ウクライナ側は「ある地点に対する砲撃をおとりに使い、そのあとで同じ場所をクラスター弾で再び攻撃している」と書き込んでいる。
(forbes.com 原文)