ウクライナ人ジャーナリストのロマン・ボチカラは18日、英国内で撮影されたとみられる動画を投稿。塗装が半分施され、整備が行われている戦車の前に立ち、この車両を含む戦車が間もなくウクライナに搬入されると説明した。
ボチカラはこの戦車を、1980年代に開発された「チャレンジャー1」と説明。だがこれは間違いで、動画に映っているのはチャレンジャー1よりずっと以前の1960年代に開発されたチーフテンだ。
Challenger 1 will soon be in Ukraine. Many of them.
— Voices of the Army 🇺🇦🔊 (@SmartUACat) July 18, 2023
God save the King! We're lucky to have such an ally. Real one. Not scared of anything. Called Great for a reason. pic.twitter.com/TD09XhVhM4
ディーゼルエンジンを搭載する4人乗り戦車のチーフテンは、時代遅れではあるものの、無用の長物というわけではない。英軍事アナリストのニコラス・ドラモンドはツイッターへの投稿で、チーフテンは旧ソ連製の戦車T-54やT-55、T-62、T-64、T-72に「総合的に勝る」と指摘している。
チーフテンは120mmライフル砲を搭載し、走行しながらさまざまな現代式弾薬を発射できる。射程は3~5kmほどだ。
だが馬力と防御力では劣り、装甲の厚さは最大でも200mmと薄い。1980年代のイラン・イラク戦争では、イラン側のチーフテンが、イラク側のソ連製T-62が搭載する115mm砲により撃破された。
英国軍はこの敗北に危機感を抱き、自軍のチーフテンにゴムと鋼鉄の装甲を追加するキットをただちに開発。この装甲は「スティルブリュー」と呼ばれ、チーフテンの防御力を50%高めた。
ただ問題は、英国がこのスティルブリューを輸出してこなかったことにある。もしウクライナがチーフテンを手に入れるのであれば、その供給元はこの戦車を最後まで使っていた国の1つであるヨルダンだろう。
ウクライナには、装甲の薄い戦車の防御力を強化してきた実績がある。強化に使われているのは、被弾時に外側へ向けて爆発を起こして弾の貫通を防ぐ「爆発反応装甲(ERA)」だ。
ERAはウクライナ軍が所有する旧ソ連製戦車にはすべて装着されている他、ドイツ製のレオパルト2A4にも装着が進められている。今年供与される予定のレオパルト1A5も装甲が薄いため、できるだけ多くの車両にERAが装着されるとみてまず間違いない。
チーフテンがウクライナにもたらすものがあるとすれば、それは日夜を問わず長射程の砲撃を行える能力だろう。チーフテンの照準器は旧式ではあるものの、開発当初はその高い性能で知られていた。
英国軍でチーフテンの砲手だったミック・ハドフィールドは最近のポッドキャストで「1マイル(約1.6km)先で小便をしている人が見えた」と回想。チーフテンの赤外線暗視装置を用いれば「車両が走り去った後でも、そのタイヤが地面に残した熱の痕跡を確認できた」と語った。
(forbes.com 原文)