ウクライナにとってはひどい成り行きではない。米防衛・航空宇宙会社のレイセオンが1960年代に生産したMIM-23ホークはシンプルで信頼性が高い。また、機動性も高く、アップグレードが容易で、低速で飛ぶドローンや巡航ミサイル、有人機に問題なく対処する。
おまけにホークはウクライナが使用している、もう1つのより近代的な地対空ミサイルシステムと互換性がある可能性がある。そのシステムとは米国とノルウェーが共同開発した「ナサムス」だ。
2015年に台湾軍が退役させ始めた十数のホーク一式を台湾から買い戻すため、米当局が台湾当局と交渉しているというニュースが7月14日に流れた。台湾はホークを自前設計の中高度防空ミサイルシステムである地対空ミサイルに置き換えている。
報じられたところによると、米国はウクライナに100基あまりのホークの発射機とミサイル、そしてレーダーなど関連装備を供与する計画だという。台湾軍がかつて使用していた発射機は、米国とスペインがすでにウクライナに供与した6基以上の発射機とレーダーからなる大型ホーク一式を補完することになる。
大量のホークの供与は、ウクライナが迫り来る危機を解決するのに役立つだろう。その危機とは、旧ソ連が開発した地対空ミサイル「S300」と「ブーク」のミサイル在庫の枯渇だ。ロシアがウクライナに侵攻した昨年2月24日時点では、数百基の発射機を含む約50のS300とブークの一式がウクライナの防空を担っていた。
17カ月にわたって激しい戦闘が繰り広げられ、ウクライナ軍はロシア軍のミサイルや大砲で約60基のS300発射機と約15基のブーク発射機を失った。だが、ウクライナの防空システムにとって最大の脅威は発射機の損失ではない。本当に懸念されるのは、ウクライナ空軍がロシア軍の戦闘機やドローン、弾道ミサイル、巡航ミサイルを寄せ付けないために毎日何十発ものミサイルを発射していることだ。