ビジネス

2023.07.20 17:00

10のキーワードから読み解く「新しい希望」とその未来

未来をつくる「なりわい起業家」

「GAFAを目指せ」「ユニコーンを増やせ」という規模を志向する標語が語られてきた一方、日本を代表するベンチャー企業の雄、Zホールディングスの時価総額は約2.85兆円(2023年3月31日)。対するGAFAの総時価総額は一時期770兆円で、日本株全体の時価総額を超える(21年9月)事例も出るなど、経済規模至上主義による成長は日本ではもはや非現実的だ。

私が提唱したいのは、文化や資源を活用した新しい経済活動を提案していくことだ。日本が長年培ってきた「自然資本」や「文化資本」は経済資本として規模だけにとらわれないグローバルな競争力をもっている。

その鍵を握るのは、「一蓮托生で、ハイリスクハイリターンによる起業」ではなく、「自然体でもっと生業に近い起業」というアプローチ。アメリカでも、レモネードスタンドやガレージベンチャーという概念があるように、あのイーロン・マスクでさえも、最初は簡単ななりわい事業を成功させて起業家としてスタートした。しかし、日本では現在、この「2つのタイプの起業」が人も知見・経験も接続していない。本来、どちらを選ぶか、という選択肢ではないはずで、グラデーションのようなものであるはずだ。

いま、「なりわい起業家」を象徴するようなユニークな人たちも生まれている。例えば、みずほ銀行員でありながら副業の事業を売却したスパイサー社長の仲本雅至。広告代理店のディレクターでありながら社団法人の理事や副業の企業で独自のビジネスを行う武蔵野デーリー・木村充慶。ほかにも、地域資源を活用してユニークな活動を行う経営者や移住起業家たち、1度目のなりわい起業を経て次の中規模起業に挑むシリアル起業家などを複数見てきた。

こうした動きを見ていると、小さななりわい起業家がたくさん生まれることが、逆説的にスケールする起業家を生む近道になるのではないか。


古市奏文◎SIIF(社会変革推進財団)インパクト・エコノミー・ラボ インパクト・カタリスト。メーカー、外資系コンサルティング会社、VCなどを経て2018年に参画し、インパクト投資の先行事例創出などをリードして行う。
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イラストレーション=ローリー・ロリット

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