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2023.07.20 17:00

10のキーワードから読み解く「新しい希望」とその未来

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「共感」基盤にした経済

コロナ禍では、誰もが「助けられる側」にも「助ける側」にもなりうることがわかった。いまは元気でも、いつ命が危機にさらされて、助けが必要になるかわからない。そういう感覚を共有する時代に、共感のネットワークを基盤とした経済、「共感経済」が求められている。

共感経済では、社会の中心に「助けを必要とする人(および自然)」がいる。周りが共感しながら自由な消費や生産、交換、投資などを通じて手を差し伸べる。両者は流動的で、常に入れ替わる。そういう共感経済による社会を目指すべきだ。

「共感」を基盤にした経済は、労働者、消費者、投資家といったすべての人が市民として「共感」をもって、個人の自由な選択を行うことで成り立つ。そこには、商品を提供する企業や政府や自治体、中間組織の支援も欠かせない。誰もが自分ひとりでは生きてはいけない。自分たちで自分たちを支えるという「自助」の意識のなかで、何のために働き、投資し、消費するのか。そう考えて行動を取るとき、購買活動も「自分ごと化」する。

企業の社会的責任(CSR)を求める考え方が広まってきたが、社会的責任は経営者だけが負うものではない。投資家や労働者、その企業の商品の消費者など、関係する人全員が責任を負うべきだ。消費者は商品の質と価格だけでなく、サプライチェーンが自然や人間に与える影響を理解したうえで、商品を選ぶ必要がある。

そうした影響を指標化する動きも進んでいる。筆者が代表を務める大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)は、企業やNPOと共通指標の作成に取り組んでおり、大阪万博の開催に合わせて、日本発の「ポストSDGs(持続可能な開発目標)」になるべく公開を目指している。企業には、この流れができるのを待つことにとどまってほしくない。いまリスクを取って、企業の本来の姿である社会の公器となる組織を目指してほしい。


堂目卓生◎大阪大学大学院経済学研究科教授。1959年生まれ。京都大学大学院経済学研究科博士課程修了。立命館大学経済学部助教授などを経て、現職。著書に『古典経済学の模型分析』(有斐閣)などがある。
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イラストレーション=ローリー・ロリット

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