「知財ハンター」が日本を救う
市民から脳波データを自動で買い取り、唯一無二の絵画を生成する「脳波買取センター/BWTC」、気象データを基に3Dフードプリンターで調理する「サイバー和菓子」......。これらは企業や専門家と共創してきたオープンイノベーション型プロジェクトの一例です。共通点は、未来の生活を示唆するようなスペキュラティブ(推測的)なアプローチ。ここで重要なのは起こりうる未来という予感を受け取れるリアリティで、リアリティの根源は未来のイシューを意識した「妄想」とテクノロジーによる「具現」です。私は現在、越境型クリエイティブ集団「Konel」の代表と、750を超えるテクノロジーの応用方法を投げかけているイノベーションメディア「知財図鑑」の代表を務めています。そして、「知財ハンター」という新しい肩書を提唱しています。
知財ハンターとは、テクノロジーを軸に未来を妄想する人々であり、技術をわかりやすく翻訳して、バイアスにとらわれず未来への活用方法を妄想し、実装力で具現化する役割を担っています。仲間となる共創パートナーを魅了し、事業化に向けてプロジェクトに発展させていくことを目指しています「知財を生み出す研究職・アカデミック領域」と「社会実装する事業部・ビジネス領域」の両側の橋渡し役をする存在でもあります。
知財図鑑では、オープンイノベーションを促進させるメソッド「DUAL-CAST」を発表しました。また、知財ハンターのためのコミュニティ「知財ハンター協会」も立ち上げ、50人を超える知財ハンターとともに活動しています。現在、「取得特許のビジネス利用化率」が低迷を続けているという現実や、日本の知財が海外からのアクセスが困難であるという現状を考えると、「知財ハンター」たちによる知財の社会実装は、これからの大企業やアカデミア、日本経済にとって、とても重要だと考えています。
出村光世◎Konel代表/プロジェクトデザイナー。知財図鑑代表/知財ハンター。アクセンチュアに在籍中の2011年にKonel創業。30職種を超えるクリエイターと共に、未来実装プロジェクトを連続して推進。20年、「知財図鑑」を創業。