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2023.07.20 17:00

10のキーワードから読み解く「新しい希望」とその未来

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クライメートテックへと名を変えた2度目の盛り上がり。「これはバブルではない、ブームなんだ」と、初期グーグルとアップルに投資した伝説の投資家ジョン・ドアは言う。

クリーンテック1.0から、領域は拡張した。モビリティ、新素材開発、フードテック、バイオテック、建物、カーボン除去、カーボン会計まで、さまざまな産業に及ぶ。化石燃料を代替する水素など、より巨大な市場を狙う技術も扱う。世界の22年上半期のクライメートテック・スタートアップへの投資金額は268億ドル規模にのぼり、気候変動の潮流が巨大な経済エコシステムを生んでいる。

一方で、その成果は数十年単位で出るため、競争に負けるではなく、時間軸の長さに息切れしてつぶれるリスクが高い。ブームの加熱中はVCから資金調達できるので、早い段階でバリュエーションが上がりきるが、売り上げはなかなか出ない。売り上げがなくバリュエーションだけが高い状態では、次の調達が難しい。

より有望なテクノロジーが出てくる、自社のテクノロジーが廃れる、後発に抜かれる時間軸の長さはさまざまなリスクを伴う。スタートアップ経営といっても、ITとはまったく違う能力が求められる。時間軸の長さをしっかり意識した経営が必要だ。

大事なのは大手企業との提携。大きな市場を攻める資金を、長期で支えられる企業と手を組まなければ、事業はなかなか続かない。

クライメートテックは、スタートアップがこれまで活躍してきた業界とは異なり、電力、石油、化学、自動車などの「大人な業界」に攻め入っていかなければいけない。業界独自の作法もあれば、国際情勢にも翻弄される。トランスフォーメーションを求める大手企業と手を取り合える「大人な起業家」にこそ、勝機がある。


宮脇良二◎アークエルテクノロジーズ代表取締役CEO。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社後、2010年電力・ガス事業部門統括パートナー就任。18年にアークエルテクノロジーズを創業し、現職。
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イラストレーション=ローリー・ロリット

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