ビジネス

2023.07.20 17:00

10のキーワードから読み解く「新しい希望」とその未来

「生物多様性」新潮流

2022年12月、カナダ・モントリオールで開催されたCOP15(国連生物多様性条約第15回締約国会議)。昆明・モントリオール生物多様性枠組が採択された。30年までの23個の行動目標も設定された。日本でよく言及されるのは目標3「陸域、内水域、海域の重要な地域を中心に30%保全」、いわゆる30by30だ。目標15「企業や金融機関が生物多様性へのリスク、依存、影響を評価し、開示することを求める」は、ビジネス領域で生物多様性が主流のトピックとなる足がかりだ。

目標22には「生物多様性管理の意思決定への先住民、女性、若者の公平な参加と権利尊重」。生物多様性でも、社会的に脆弱な立場にある人々を無視しないと国家戦略の基になる行動目標で明示されたことは、意義深い。COP15に若者セクターと参加した私にとっては、今後の活動の根拠となる。

この新枠組み採択を受け、日本では23年3月に新国家戦略「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定。生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」を目指す戦略からは、環境省の30by30志向が読み取れる。

海外では、生物多様性と気候変動の同時解決の機運が高まる。生物多様性保全に挑む世界中の科学者が集うIPBES(生物多様性と生態系サービスに関する政府間パネル)は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)と、生物多様性と気候変動に関するワークショップを合同開催。気候変動対策を行えば生物多様性を損なう、トレードオフの関係性になるケースは非常に多い。

一方で、生物多様性の保全活動が、気候変動対策に悪影響を及ぼすケースは非常に少ない、と報告が出された。ほかにもIUCN(国際自然保護連合)が両課題のシナジーを高めることで解決しようという趣旨のセミナーを実施、COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)がバイオダイバーシティーデイを設けるなど、同時解決を目指す動きがようやく高まってきた。


矢動丸琴子◎一般社団法人Change Our Next Decade代表理事。2019年に一般社団法人Change Our Next Decadeを設立。生物多様性分野での若者による活動促進に尽力している。
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イラストレーション=ローリー・ロリット

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