経営・戦略

2023.07.12 13:00

DX企業への変身を叶えた「自律と信頼」の変革|人的資本経営トーク#7

1000社以上へCHRO機能の強化支援実績を持つLUF会長の堀尾司が、Forbes JAPAN Web編集長・谷本有香氏とともに、注目のビジネスリーダーやCHROをゲストに迎えて贈る「人的資本経営の時代を考える」トークセッション。その第7回目が6月14日、Twitterスペース上にて行われた。

ゲストは、富士通で執行役員 EVP CHROを務める平松浩樹氏。これまで経営体制や経営戦略の変更に伴い、人事制度や働き方改革に積極的に取り組み、ダイナミックな変革を遂げてきた富士通の姿勢に迫った。


納得感を高めたのは、「一貫性のある変革」

平松氏は1989年に富士通に入社し、2018年に人事本部人事部長に就任。2020年4月からは執行役員常務として、ジョブ型人事制度、ニューノーマル時代の働き方・オフィス改革など数々の変革を率いてきたリーダーである。

冒頭、堀尾から富士通の人事改革の変遷を問われた平松氏は、次のように振り返った。

「富士通は、日本型の人事制度ではグローバルでの競争に勝てないという危機感から、1993年に成果主義に舵を切り、目標管理制度の導入を中心に人事制度を改革しようとしました。目指す方向性は間違っていなかったものの、全社への浸透やビジネスインパクトを与えることはできなかった過去があります。転機は2019年6月、時田が代表取締役に就任したことです。IT企業からDX企業への転身を目指すにあたり、制度やカルチャーをスピーディーに改革することとなりました」(平松氏)

富士通は2020年以降、ジョブ型人事制度の採用、社員の誰もが希望の仕事に挑戦できるポスティングシステム、人事から現場への採用の権限委譲など、数多くの人事制度の改革を実行。社員が主体的にビジネスを創造し、キャリアを描けるような環境を構築してきた。

これに対して、堀尾から「かなり大きな改革ですが、経営や人事の方向性、スピード感について、現場からの反対などはなかったのでしょうか」と質問が投げ掛けられた。すると平松氏は「『特定の課題に対処するために施策を行う』といった部分最適ではなく、一貫性のある変革を実施することを意識しました」と説明。

続けて平松氏は、「富士通では『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく』というパーパスを達成するために、目指す人や組織を『社内外の多才な人材が俊敏に集い、社会のいたるところでイノベーションを創出する人や組織になっていく』というビジョンに落とし込みました。それを受けて人事部門では、『全ての社員が魅力的な仕事に挑戦』『多様・多才な人材がグローバルに協働』『全ての社員が常に学び成長し続ける』というコミットすべき重点テーマを設定したのです。こうして体系化すると、社員にも『一貫性があるし、変革のために必要なことだ』と理解してもらえました」と語った。

一連の改革をコロナ禍の2020年から実施したことについて、谷本氏が「オンラインで進めなければならないため、難しさがあったのではないでしょうか」と質問すると、平松氏は「むしろ、コロナ禍だったことが功を奏しました」と回答。「コロナ禍という未曾有の事態の中で、さまざまな変化が起き始めており、社員にとっては変化への免疫ができている状態だったからこそ、思い切って変革を進められたと思います」と述べた。
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文=倉本祐美加

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