ビジネス

2023.05.11 08:30

会計のタイムラグを限りなくゼロへ。世の中の「企業経営」をひっくり返したい

会計をリアルタイムに近づけたい

植野:CxOを目指す読者にアドバイスはありますか。

武地:憧れだけでは長続きしないのでは。CxOに就くことは、あくまでやりたいことを実現する手段。僕はたまたま入ったfreeeという環境ですが、自分の人生の一時期をかけるに値するビッグプロジェクトだと思うし、「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを通して世の中に貢献できるんじゃないか、と共感したうえでCxOをやらせてもらっている側面があります。

植野:CxOとは経営陣なのだから、自分の領域に留まらず、会社全体が社会的な価値をいかに生み出せるかまでを、背負うべきだと。

武地:稲盛さん流に言うと「動機善なりや、私心なかりしか」です。ちゃんと社会だとか、大きく言うと、人類にとってちゃんと価値のあることをやっているか。自分がやりたいからとか、格好つけたいからじゃなく、自分がする決断がちゃんと世の中のためになっているか。その結果、お客さんやfreeeのためにもなっているかを問い続けられることが大事だと思います。

M&Aをやるときは、freeeのような会社であっても社内から反対の声が上がります。それぞれの立場もあるし、不安なのはよくわかる。でも、やったほうが、世の中にとって、freeeにとって、グループに入られる会社にとっていいことだと僕自身が信じているか。毎回すごく考えるんです。

植野:善かどうか。

武地:そこに立ち戻り、ちゃんと考え尽くせるか。その結果、自分でいいことだと信じられれば、いくら反対されても「いつかわかってくれる」と思って進めないといけません。

植野:稲盛さんからの影響は大きいんですね。

武地:好きなんですよ。もうひとつ、稲盛さんの言葉で「自燃性」の人、つまり自ら燃えられる、パッションを燃やせる人というものがありますが、単純化すると「明るい人」。freeeはそういう人間が好きで、採用基準にしています。

先ほどの「社会の進化を担う責任感」と、明るい「ムーブメント型人材」、両者の素質を高いレベルでもつ人は、どのポジションでも活躍できるはずです。

植野:生まれながらの明るさがある人は、ある種の特権ですね。CxOや役員、佐々木さん(※3)もそうですか。

武地:僕が知っている限りの佐々木は、明るいし、いっさい派閥をつくらない、誰もエコひいきしないリーダー。もう6年半働いていて、普段の会議は活発にしていますが、飲みに行ったことはほとんどありません。CPO時代に失敗してヘコんでいるとき、ふたりで中国のフィンテックを見に行こうと誘ってもらい、3泊4日の出張をすべて手配してくれたのが唯一です。
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文 = 神吉弘邦 写真 = 川合穂波

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