ビジネス

2022.12.01

ソニーグループをデジタル改革で鼓舞する司令塔の策とは

ソニーグループ常務CDOの小寺 剛(左)と植野大輔(右)

CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは?

ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ(隔月掲載予定)


植野大輔(以下、植野):小寺さんがネットワークの分野で培った知見を、ソニーグループ全体に実装するミッションについて伺うのが楽しみでした。

小寺剛(以下、小寺):私自身いろいろ苦労して痛い思いもしてきました。それを学びとして生かすのがCDOの役割と自任しています。具体的には、ゲーム&ネットワーク、映画、音楽、エレクトロニクス、半導体、金融……グループ各社がそれぞれのコアコンピタンスを磨きながら継続的な成長を図るためのツールやリテラシーを提供していきます。

植野:CDOに就くきっかけになった小寺さんの実績をひとつ挙げるとしたら、なんでしょうか。

小寺:PlayStation Network(※1)の月間アクティブユーザーを1億人超にまで成長させたことです。そのノウハウを広く生かすべく、ここ2年ほど本社のDX推進担当を兼務しましたが、ソニーグループ(※2)の設立に合わせて、専任のCDOとして米国から呼ばれました。

植野:PSNはいまや巨大なグローバルのネットワークサービスなんですね。

小寺:吉田(※3)はソニーグループの中長期的な目標としてワンビリオン、10億人と直接つながる企業になる未来像を掲げました。縦軸の成長を促しつつ、さらにグループ全体という横軸で新たな機会の創出を狙っていかないと難しいでしょうから、これは相当に高い目標です。

植野:グループ会社を束ねるだけなら一般的なポートフォリオ経営だから、垣根を壊してつなぎ込むということですね。

小寺:各社にはほかの事業でも活用できる資産や人材、ノウハウがあるので、縦と横のデリケートなバランスを取りつつ、グループのケイパビリティ(組織的能力)をデジタルで把握して有効につなげようとしています。人的な資産をきちんと保全して、モチベーションを継続させたい。そうした喫緊の課題への対応と将来への環境づくりは、実は大いに補完関係があります。

植野:CDOが戦略人事にオーバーラップする。

小寺:そうです。全社がもつ人材や資産をどう最大限に活用するか、そこにデータをかけ合わせて事業に生かそうと考えています。プライバシーやコンプライアンスに配慮しながら、可能な限り共有できるデータをもち寄り、新たな付加価値を創出できる会社にしたい。そのための基盤をグループ内に築きながら、共通IDを整備する試みを進めています。

ネットワーク化の大波を体験


植野:ところで、新卒でソニーを志望した理由は?

小寺:ソニーは私たちの世代にとって憧れのブランドでした。大学は法学部の政治学科でしたが、ダブルスクールでデザインを学んだり、インテリアデザインのオフィスで少し働いたりもしたんですよ。ものづくりやデザインの基礎を学び、ソニーに入って生かそうと考えたんですね。

植野:念願の会社に入ってどうでしたか。

小寺:デザインやマーケティング、商品企画の部署を希望したものの、配属は企画管理部でした。

植野:同じ「企画」でもかなり違う。

小寺:最初の挨拶で「希望した部署ではないから会社を早く辞めたい」と生意気を言ったので、30年たったいまでもからかわれます(笑)。でも、そのうちに経営企画の業務が面白くなったんです。
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文=神吉弘邦 写真=有高唯之

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