ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ(隔月掲載予定)。
植野大輔(以下、植野):普段、経営層に特化した評価育成、スカウトに携わる丸山さんから見て、日本企業からは特にどのCxOが求められていますか。
丸山泰史(以下、丸山):CDO、CIOなどのデジタル系はホットです。また、専門性が高く、外部人材が活躍しやすい機能として財務(CFO)やリーガル(CLO)を外部に求める例が増えています。
もうひとつのトレンドとして、その専門性をもって全社的トランスフォーメーションを一緒にやれる方を探したいニーズも多いです。CHROもそうした文脈で採用したいという声が来たり、CDOやCFOであっても単なる専門家でなく、社長目線で一緒にトランスフォーメーションをやれる方を求めています。
植野:経営層であるボードの機能は正しく認識され始めたものの、まだ人材の層が薄いと。「伊藤レポート」(※1)も、結局は5Cが重要、やはりCxOを強化すべきだという提言でした。ちなみに、日本で最も枯渇しているCxOのポジションとは?
丸山:やはりCEOですね。その特殊性に鑑みたとき、この国でCEOをシステマチックにつくれているかというと、現状は厳しいです。
元フェンシング代表の太田雄貴さん(※2)に教えてもらったのですが、彼いわく「国体選手と金メダリストを育成するのはまったく異なる」と。CEOに求められるものが非常に高度化している現在、金メダリスト養成のように早期に資質ある人材を見出し、世界水準の育成を行うことが必要だと思います。
植野:CEOに求められる資質とは?
丸山:高い経営能力をもつことは大前提として、そのうえで「健全な自己否定」ができること、強みとともに「自分の限界」も体感していることが必要だと私は思うんです。ただし、そこへの「脱皮」は本当に難しい。実績を上げた方ほど自分に自信を持つゆえに乗り越えにくかったりします。そのためには、やはり、輝かしい経験だけではなく、辛酸を舐めるような経験も必要なのだと思います。
※1 伊藤レポート:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」(座長:伊藤邦雄 一橋大学名誉教授)による2020年9月の報告書。通称「人材版伊藤レポート」。大枠のテーマは人的資本経営への移行についてであり、そのために経営陣、取締役会、投資家の3者がそれぞれ果たすべき役割とアクションが述べられている。CEOを筆頭とした、CSO、CHRO、CFO、CDOの経営陣(5C)が、人材と資金、技術や情報を連携させて経営戦略を実行することが肝心とする。
※2 太田雄貴:1985年生まれ。元フェンシング選手。2008北京オリンピック(フルーレ個人)、2012ロンドンオリンピック(フルーレ団体)でともに銀メダルを獲得。公益社団法人日本フェンシング協会会長、国際フェンシング連盟副会長を歴任。現在、個人投資家としても活躍の場を広げる。