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キャリア・教育

2025.04.01 14:15

英語ノンネイティブの不利を伝えたゼレンスキー英語と「日本人のための7カ条」

Getty Images

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英語は世界一使われている言語であり、「世界共通語」ともされている。そして、その使い手は、英語を母語としない人口のほうが多い。

今静かに売れている『使うための英語―ELF(世界の共通語)として学』(中公新書)の著者で社会言語学者の瀧野みゆき氏は、英語の使い手の間に明確にある「不平等」が、先日のゼレンスキー・トランプ会談に現れていたと考察する。以下は氏による寄稿である。


交渉「決裂」は英語が原因?

2025年2月28日、ゼレンスキー大統領とアメリカのトランプ大統領がホワイトハウスでメディアの前で決裂し、世界の注目を集めた。その後のウクライナ情勢は厳しい状況が続いているが、この出来事は政治ニュースであるだけでなく、既に多くの人が指摘しているように、英語を使った国際交渉の難しさを浮き彫りにした。
 
ホワイトハウスでの公開記者会見で、両首脳が激しく口論するという異例の事態が発生した。多くのメディアがこの対談を分析する中で、日英双方の報道で目立ったのは、「ゼレンスキー氏は母語でない英語で会談をしたために、不利な状況に陥った。ゼレンスキー氏は通訳を使うべきだった」という論調である。

ゼレンスキー氏は英語のノンネイティブスピーカーであり、その英語表現がトランプ氏との対立を深めた可能性が指摘された。もし通訳を介していたら、対立を避けるか、少なくとも緩和できたのではないか、という見方が広がったのである。

もちろん、この会談の背景には、複雑で極端な政治状況があり、トランプ大統領やバンス副大統領の発言も挑発的であった。さらに、最近の、トランプ氏とカナダの首相との激しいやりとりを見ると、英語がたとえ母語でも、会談が決裂した可能性は高い。

それでも、この出来事は、通訳の役割やコミュニケーションのあり方について考える貴重な機会となった。

会談の難しさ

これまでゼレンスキー氏は、数々の国際舞台で英語を使い、会談や演説を通じてウクライナの立場を自らの言葉で訴え、多くの成果を上げてきた。実際、その英語は日本人の一般的な感覚からすれば非常に流暢である。

しかし、今回のホワイトハウスでの記者会見では、これまでとは異なり、ゼレンスキー氏の英語表現がノンネイティブスピーカーとしての課題を露呈したとの指摘もある。これは、対立的かつ困難な会談のなかで、極めて高度で熟練した英語コミュニケーションが必要だったことが背景にある。

以下に、この会談を困難にした要因を整理する。

1.根本的な立場・目的の違い

トランプ氏は、対ウクライナ支援を「不要な出費」と考え、戦争を早期に終結させるために、ウクライナが大きく譲歩し、アメリカに交渉を委ねるべきだと主張していた。一方、ゼレンスキー氏は、これまでの犠牲、独立国としての主権、さらには将来のロシアの脅威を踏まえ、安易な妥協は受け入れられないと考えていた。

さらに、ヨーロッパ、バイデン前大統領、そして何よりプーチン大統領に対して、根本的に異なる考えを持っていた。

2.極端な力関係の差

強大な経済力、軍事力、政治力を持つアメリカに対し、ウクライナの立場は圧倒的に弱かった。

この極端な力の差の中で、トランプ氏は、アメリカと自分の力を強引に誇示しようとする一方で、ゼレンスキー氏はこの会談を、ウクライナの立場を説明し、理解を求める場にしようとした。

3.重要な命運が賭かった交渉

アメリカの経済・軍事支援なしにウクライナが戦争を継続することは不可能であり、ウクライナにとっては国家の存亡を賭けた交渉だった。一方、トランプ氏にとっては、大統領選で掲げた「素早い戦争終結」という公約を実現するための交渉であり、自身の政治的な威信がかかっていた。

次ページ > 英語ノンネイティブスピーカーとしての課題

文=瀧野みゆき 編集=石井節子

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