キャリア・教育

2025.04.01 14:15

英語ノンネイティブの不利を伝えたゼレンスキー英語と「日本人のための7カ条」

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日本人ビジネスパーソンの英語交渉

ゼレンスキー氏の経験から、英語での交渉において日本人が直面しやすい課題が浮き彫りになった。ここから学ぶべきポイントを考えたい。

まず、英語で困難な交渉を行う際には、コミュニケーション上のリスクを真剣に検討し、適切な対応策を講じるべきだろう。特に、「根本的な利害関係の不一致」「力関係の極端な差」「交渉の高度な重要性」が予想される場面では要注意である。相手との英語力の差が大きければ不利になりやすいし、その差を意図的に利用されたりする可能性もある。通訳を雇うべきかどうかを慎重に判断する必要がある。

実際、政治や外交の場では、重要な交渉において通訳を介するのが常識となっている。

ただし、日常的なビジネスの場では、通訳を利用することが難しいケースも多い。通訳を雇うには高い費用がかかるうえ、事前の準備が必要であり、交渉時間も長くなる。それ以上に、交渉の状況を正確に理解し、高度な言語力を備えた通訳を見つけるのは容易ではない。

政治家や経営者は別として、一般のビジネスパーソンにとって、商談のたびに通訳を手配するような余裕はなかなかない。

難しい英語の会議をこなすには ?

では、日本人のビジネスパーソンが、ゼレンスキー氏のような極端な状況ではないにせよ、難しい交渉を、英語を使って、自力で行わなければならない場合、何を考えるべきだろうか。日常的なビジネスシーンにおける、難易度の高い英語での交渉について考えてみたい。

まずは、実際の交渉の場で、すぐに実践できることを整理しよう。

1. 相手のペースにあわせず、焦らない

相手が早いテンポで交渉を進めても、「すぐに答えなければならない」と焦らない。意図的に間を取り、じっくり考える余裕を持つよう心がけよう。

可能であれば、議論のスピードを意識的にスローダウンさせる。攻撃的な相手が言葉の優位性を利用して会話を支配しようとすることもあるため、自分から「ゆっくり話しましょう」や「この意味を確認させてください」といった提案を行い、必要なペースを確保することが大切である。

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2.交渉の進め方をコントロールする

交渉の緊張が高まり始めたら、一度立ち止まり、議論を組み立て直すことが重要だ。休憩を提案し、頭の中を整理し、冷静に考えることで、より的確な対応ができる。

また、日本人の同僚がいる場合は、英語で返答する前に「重要なポイントを明確にするために短く相談したい」と申し出て、日本語で考えるのも有効な手段だ。

3.ビジネスパーソンとして自信のある態度を示す

英語力の強弱が交渉の立場の強弱と結びつかないよう注意し、双方が対等な立場になるように意識する。

たとえば、「Sorry, my English is not good.」と言って会議を始める人がいるが、これは自ら立場を弱く見せる印象を与えかねない。英語に不安があり、相手に配慮を求めたいのであれば、「Could you speak more slowly?」 のように、より具体的に依頼する方が効果的である。具体的な要望であれば、相手も無視しにくくなる。

礼儀正しさのつもりで英語力について謝ると、自分から弱点を認める印象を与え、相手に付け入るスキを与えかねない。日本語では謙遜が美徳とされるが、英語では異なる解釈をされやすいことを理解しておこう。

もちろん、英語力の差を相手に利用されることを完全に防ぐのは難しい。しかし、少なくとも自分の姿勢や心構えだけは揺るがないようにしたい。

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文=瀧野みゆき 編集=石井節子

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