ビジネス

2022.11.03 11:00

2年後の取締役会のアジェンダまで描く。「変化力」のリーダーシップをとるCOO

DX JAPAN代表 植野大輔(左)リクルートホールディングス取締役 兼 常務執行役員 兼 COO 瀬名波文野(右)

CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは? ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ。


植野大輔(以下、植野):ホールディングスのCOOとして、現在はどんな仕事をされていますか。

瀬名波文野(以下、瀬名波):グループ全体のファイナンス、リスクマネジメント、人事、サステナビリティ、そして経営企画では、特にガバナンスを見ています。

CEOの出木場(*1)との役割分担では、グループ全体の戦略、プロダクトのロードマップのような「攻め」を出木場が見て、どうやって明日の会社をリアルに動かしていくかという「守り」は総じて私が見るといったパートナーシップです。

植野:出木場さんはどんなタイプのCEOでしょう。

瀬名波:ひと言で言えば「鬼才」ですね。重要なことだけを「これが大事」と射抜く力が強いし、そう言える力もあります。だから、それ以外の「大事ではないこと」はボロボロと落ちていきます。

でも、もっとはがしていきたい。「あなたのスケジュールをいかにスカスカにするかが私の仕事です」と出木場には言っています。鬼才に普通のことをしてもらっても仕方ないので、彼にしかできないことに集中してもらうのが重要です。

植野:出木場さんにしかできないこととは?

瀬名波:産業そのものの構造変革。それをプロダクトフィーチャーといった細かい粒度まで考えながら推進していくことですね。時間軸は30年です。

世の中に「今日は何を実行するか」に長けたエグゼクティブはたくさんいるし、未来を語れるアカデミックな人たちも大勢いますが、「今日」と「30年後」を行ったり来たりするのは、すごく知的な体力が要ることです。

植野:逆に、出木場さんにはなくて、瀬名波さんがもっているものは何だと思います?

瀬名波:私の仕事は、出木場の描く30年先までの未来像を実現するために、例えばグループのガバナンス、人事・組織、リスクマネジメント、ファイナンスといった複数の領域を動かすこと。それも組織ごとの個別アジェンダではなく、複数のアジェンダが経営全体のなかでどう関連するかをとらえ、議論の順番や参加者をデザインすることがポイントです。

よく出木場からは「近い将来を、深く、精度高く想像しまくるよね」と言われます。やりたいことを実現するために、どのタイミングの、何の会議体で、誰がどういう発言をしている状態が理想か──。そこから逆算して、いろんな準備をするわけです。そういった「想像」と「段取り」が得意ですね。

植野:つまり、2年ぐらい先の取締役会のアジェンダないし決議事項までを、いま描けてしまうと!

瀬名波:だいたいそのくらいのスパンです。だから、CEOとCOOが「攻めと守り」で表裏一体なんです。

仕事の「意味」に向き合った

植野:ご出身は沖縄ですね。

瀬名波:海沿いの北谷(ちゃたん)町で育ちました。小さいときはよく食べ、すごくよく泣く、引っ込み思案の子だったみたいですよ。

植野:えっ、引っ込み思案! ?

瀬名波:(笑)。外で遊ぶのが大好きで、塾や習いごとにまるで興味がありませんでした。

でも、思いがけず進学校へ通うことになってからは「外の広い世界に出てみよう」と考えて学外の活動もしました。高校2年生のとき「九州・沖縄サミット」(*2)があって、政府のボランティアをしたんです。
次ページ > 各々の仕事には、きっとそれぞれにとっての意味がある

文=神吉弘邦 写真=高橋マナミ

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事