ビジネス

2022.11.03 11:00

2年後の取締役会のアジェンダまで描く。「変化力」のリーダーシップをとるCOO


植野:瀬名波さん自身が経営の真ん中に据えた「大事なもの」は、やはり2021年5月に出した「サステナビリティへのコミットメント」ですよね。

瀬名波:2019年の末、翌年に取締役へ就くことが内定したので、そこで考え込みました。取締役としてより責任が増し、大きな影響力をもつなか、私は「何に心血を注ぐのか?」と。HRマッチングのマーケットで世界一になることには懸命に取り組んでいます。でも究極的には、それはささいなこと。それより「大きくなっていく自分たちの影響力を、どうやってよいことに使っていけるか?」のほうがずっと大事。だから「事業のど真ん中でソーシャルインパクトをどう出せるか」にこだわってESGコミットメントを出しました。「何かいいことしましょうよ」といったフワフワした話ではないんですよ。



植野:瀬名波さんは、自分にとっての仕事の意味とリクルートという会社の関係を、win-winで本当にきれいに描けているのでしょうね。

瀬名波:そんなきれいな感じではないですが、強いていうなら、良いことをしている企業はたくさんあるし、すごくもうけている会社もたくさんあります。でもその「両方」を大きくやれている会社は、世界中を見てもあまりなくて。だからこそ、そこを狙っていきたいです。めちゃくちゃ成長してる、でも社会に貢献しててすごく愛されている、そんな企業体にしたい、という強い思いがあります。

「CxO」のビジョン、三カ条(瀬名波文野)


一、なるべくCEOから仕事を「はがす」

二、長いタイムスパンのなかで「いまはどこか」を意識

三、企業価値の向上に専念、「ばんそうこう」は貼らない

(*1)出木場久征(いでこば・ひさゆき)
リクルートホールディングス代表取締役社長兼CEO。1975年、鹿児島県生まれ。99年早稲田大学商学部卒業後、リクルート入社。2012年執行役員就任後、同年自身が買収を推進した米Indeed社のチェアマンに就任。同社CEO&プレジデントを経て、16年リクルートホールディングス常務執行役員、18年専務執行役員。19年取締役、20年には副社長執行役員を兼任、ファイナンス本部、事業本部(COO)を担当。2021年より現職。

(*2)九州・沖縄サミット
2000年7月21日から沖縄県名護市の万国津梁館で3日間開催。当時はG7にロシアを加えたG8による主要国首脳会議だった。日本初の地方開催サミットに合わせて二千円紙幣を発行。

(*3)プロヒッチハイカー
都市部への自動車交通規制(車両あたり3人以上乗っていないと乗り入れ不可)への対抗策として生まれた、都市の周縁部から他人の車両に同乗することでフィーを得る仕事。同乗した後、再び徒歩で周縁部に戻ることを繰り返す。「ジョッキー」とも呼ばれた。児童労働問題も深刻化して、ジャカルタでは2016年からナンバープレートの奇数・偶数別に平日の乗り入れを規制するシステムに変更。


せなは・あやの◎1982年、沖縄県生まれ。2006年早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。経営企画室、HR領域の営業担当を経て12年ロンドン赴任、14年に買収した人材派遣会社で最高業務責任者。18年米Indeed CEO首席補佐官、リクルートホールディングス執行役員。20年取締役、21年より現職。人事・総務本部、ファイナンス本部、リスクマネジメント本部、経営企画本部(経営企画、Sustainability Transformation)を担当。

うえの・だいすけ◎DX JAPAN代表。名古屋商科大学ビジネススクール(NUCB)客員教授。早稲田大学政治経済学部卒、MBA、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、ローソンへ出向中はPontaカードなどのDXを推進。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。

文=神吉弘邦 写真=高橋マナミ

この記事は 「Forbes JAPAN No.096 2022年8月号(2022/6/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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