ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ。
植野大輔(以下、植野):ユニファは保育業界のDXを手がけるソーシャルスタートアップとして注目されています。資金調達はどのステージですか。
星直人(以下、星):私が入社したのはシリーズBの後ですが、シリーズCで35億円、シリーズDで40億円の調達を実施しました。スタートアップの資金調達だと一般的にはエクイティ(株式)のイメージが強いものの、現在はデット(借り入れ)の活用も増えていますから、株式の投資家に加えて、複数の銀行さんと常にお話をして備えています。
植野:スタートアップのCFOは、ともすると大型出資のリリースが注目されがちです。でも、その水面下では常に地道な準備をされているんですね。
星:いつどうなるかわからない不確実性が高いのがスタートアップなので、いつでもキャピタルが取れる下準備は必要ですね。実際、シリーズDの資金調達の際には、しっかりと時間をかけて100ページ超のピッチデック(プレゼン資料)を作成しました。
植野:資金調達のほか、日常で何をやっていますか?
星:多岐にわたりますが、いわゆるステークホルダーマネジメント全般です。私たちのステークホルダーは、株主であり、顧客であり、メディアであり、潜在的な採用候補者など非常に幅広いです。中長期的に見れば、すべてのステークホルダーの利害関係は一致するはずですし、そこに発するメッセージは統一されるべきだと考えています。
近未来では上場を視野に入れていますから、エクイティストーリーも大切です。海外の例だと、オールバーズ(※1)がSPO(※2)というかたちで上場を試みましたが、あのような枠組みも含めて、多くのステークホルダーに共感いただけるような選択肢を検討しています。
植野:目下、いちばん頭の中を占めていることは?
星:非財務的なものだと採用面ですね。スタートアップのグロースは「キャピタル」と「人」に大きく影響を受けます。パーパスに強く共感してくれる優秀な人材にどんどん仲間になってもらえるかが勝負です。そのための施策だったり、人材エージェントさんとの密なコミュニケーションにかなりマインドシェアを割いています。
(※1)オールバーズ(Allbirds)2014年にティム・ブラウン(ニュージーランドの元サッカー選手)らがサンフランシスコで共同創業。地球環境に配慮した製造工程、メリノウールやユーカリ繊維などの天然素材を使ったサステナブルな手法でシューズ、アパレルを販売。米Time誌が「世界一快適なシューズブランド」と紹介して人気に火が点いた。
(※2)SPO「Sustainable Public equityOffering(サステナブル株式公開)」の略称。ESGに配慮した会社であることを証明する第三者機関の評価を伴った新規上場フレームワーク。ESG投資資金を集めやすくするメリットがあり、オールバーズが2021年8月にナスダックへ上場した際に試みた(後に取り下げて通常のIPOを選択)。