植野:意思決定の精度を上げるため、謙虚に先輩たちの肩に乗っているわけですね。
星:最終的に自分の頭で考えるのは欠かせませんが、優秀で経験豊富な先輩や友人の知見をお伺いしない手はないと思います。そのうえで、最終的には「正しい意思決定をすること」だけではなく、「意思決定を『正しいものにする』こと」が本当に重要。結局のところ、意思決定が正しかったかどうかは結果によって判断されるので、意思決定の前工程も大事ですが、むしろ後工程が大切ですね。
植野:同感です。昔、自分が三菱商事の新人時代に、ある玩具メーカーのCFOから、経営は「右か左か悩むより、選んだほうでうまくやれ」と教わったんです。私は戦略側の人間ですが、いまでも私の経営観の幹となっています。
星:スタートアップでは戦略も大事ですが、エグゼキューションし切れるかがさらに大事だと思います。感覚的な重要度は2割対8割ぐらいの比率です。
植野:あらためて、理想のCFO像はありますか?
星:私自身はCFOという言葉そのものに強いこだわりはありません。CFOは「財務に軸足がある経営者の一人」と個人的には整理しています。そのうえで、短期と中長期という時間軸の概念をもち、二律背反する考え方もちゃんと昇華して、最適な意思決定をする。そうやって持続可能な会社をつくり上げ、会社の企業価値を中長期で最大化できるのがいいCFOの条件ではないでしょうか。
「CxO」のビジョン、三カ条(星直人)
一、企業価値の最大化に対するコミットメント
二、CEOにも臆しないフェアネスと誠実さ
三、意思決定を「正解にする」までやり切る胆力
ほし・なおと◎1982年、福島県生まれ。2005年早稲田大学政治経済学部卒業、07年同大学院にて修士号を取得後、外資系投資銀行のモルガン・スタンレー証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)の投資銀行本部に新卒入社。東京とニューヨークオフィスで約12年間勤務し、サントリーによるビーム買収など米国関連の大型M&A案件などを手がけた。19年より現職、財務戦略や各種の戦略的施策を主導する。
うえの・だいすけ◎DX JAPAN代表。早稲田大学政治経済学部卒業、MBA取得、商学研究科博士後期課程単位満了退学。三菱商事入社、ローソンへ約4年間出向、PontaカードなどのDXを推進。ボストンコンサルティンググループを経て、ファミリーマートへ。ファミペイの垂直立ち上げなどDXを統括・指揮。モルゲンロット執行役員CSO。